『19番目のカルテ』第6話は屈指の名エピソードに 死を見つめ共に生きる“徳重”松本潤の視点

8月24日放送の『19番目のカルテ』(TBS系)第6話は、終末期医療の現実を映し出した。
総合診療科で在宅ケアを希望する患者の訪問診療をすることになり、滝野(小芝風花)は肺がん患者の半田辰(石橋蓮司)と対面する。ターミナルケア(終末期医療)は、身体・精神的な苦痛を和らげながら、最期を迎えられるように支援するケアを指す。76歳の半田の病状はステージ4まで進んでおり、病院でできる治療はなく、本人もこれ以上の治療は望んでいない。そのため、在宅で最期の瞬間を迎えることになった。
終末期医療に対して抱くイメージは人によって違う。身近な人で経験がないと、想像がつきづらいかもしれない。半田が初対面の滝野に伝えたのは「カッコよく死にたい」ということ。半田のために何ができるか悩む滝野に、徳重(松本潤)は「これから一緒に過ごす時間が答えになる。僕達はたまたま半田さんの船に乗り合わせただけ」と話す。こうして滝野と半田の“旅”が始まった。
第6話を観て、終末期医療の印象が一変した人もいたはずだ。患者自身は迫りくる死を受け入れながら、理想の死に方を思い描く。家族は苦しむ本人を目にして葛藤する。担当医は初めてのターミナルケアに戸惑い、できることはないかと手を尽くす。それぞれに思いがあり、それぞれのやり方で最期を受け入れなくてはならない。
滝野にとっては、赤池(田中泯)の言葉がヒントになる。赤池による自筆ノートの「終末期医療」のページは白紙のままだ。終末期医療の難しさについて、赤池は死の現実を口にする。滝野が対峙する難しさは、避けようのない死の苦しみと言い換えられる。「なんでも治せる」医師を目指していた滝野にとって、病気を治すことで患者には未来があるはずだった。しかし、赤池はそれを否定して、こう言う。
「これからがどんなに短くても、最期の瞬間まで人生は続く」
覚悟を決めた滝野は、文字通り二人三脚で半田とともに“その時”を目指して進んでいく。2人の心の交流が丹念に描かれていく。それはまさに半田の過去と人生をめぐる“旅”だった。一方で、病気の容赦ない現実も描かれる。日に日に衰弱していく患者。病状の急変を目にして、動揺する家族。どうしようもない現実を克明に描いていく。
同居して介護する半田の次男の龍二(今野浩喜)は治療の再開を望む。治療は無理だと理解しても、苦しむ本人を前にすると何もしないわけにいかない。母の最期に間に合わなかった後悔も心を占めていた。滝野は葛藤する龍二に寄り添い、半田も苦しむ息子を励ます。そうやって家族が死を受け入れていくプロセスを描く。
滝野自身も動揺して新たに治療を試みようとする。そんな滝野に徳重は一言、「つらいね」。その言葉で滝野は抱えていた気持ちを吐き出すことができた。徳重の言葉で、滝野は自分を取り戻した。
このようにして死を受容する心の変化を丁寧にすくいとることで、終盤のにぎやかなパーティーがよりいっそう深く、美しいものとして心に刻まれる。ここに至るまでの小芝風花と石橋蓮司、また今野浩喜、松本潤らの芝居は、各人がそれぞれにとっての死を見つめ、感情を掘り下げ、その振幅を生きることで真に迫る名演となった。
ターミナルケアを美しく描いた作品はこれまでもあったが、『19番目のカルテ』第6話は、死という動かしがたい現実をドラマに写し取り、患者の人生を見つめることで生命の尊厳を描ききった。死してなお残る半田の生きざまを証明し、登場人物ひいては視聴者である私たちが同じ連続性の中にいることを明らかにした。医療ドラマ史に残るエピソードとなった。
富士屋カツヒトによる連載漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』を原作に、坪田文が脚本を手掛けるヒューマン医療エンターテインメント。松本潤がキャリア30年目にして初となる医師役に挑む。
■放送情報
日曜劇場『19番目のカルテ』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:松本潤、小芝風花、新田真剣佑、清水尋也、岡崎体育、池谷のぶえ、本多力、松井遥南、ファーストサマーウイカ、津田寛治、池田成志、生瀬勝久、木村佳乃、田中泯
原作:富士屋カツヒト『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(ゼノンコミックス/コアミックス)
脚本:坪田文
プロデューサー:岩崎愛奈
企画:益田千愛
協力プロデューサー:相羽めぐみ
演出:青山貴洋、棚澤孝義、泉正英
編成:吉藤芽衣、髙田脩
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