小芝風花が葛藤を経て感じた“新しいこと”への意欲 「挑戦できる役をずっと演じ続けたい」

「理想と現実が違うっていうのは、きっとたくさんの人が共感する部分」。小芝風花は、新作ドラマで演じる新米医師の葛藤に自分自身を重ねた。10代の頃、周りと比べて「なんで私は役をもらえないんだろう」と悩んだ記憶。目の前のことに精一杯で、そもそもの目標を見失ってしまう感覚……。
7月13日よりTBS系で放送がスタートした日曜劇場『19番目のカルテ』で、小芝は整形外科医・滝野みずきを演じている。「何でも治せるお医者さんになりたい」という理想を抱きながら、大病院の「診察時間1人10分」という現実に直面する役柄だ。主演の松本潤演じる総合診療医・徳重との出会いが、彼女に変化をもたらしていく。
日曜劇場初出演、医師役も初挑戦。話題作への出演が相次ぎ、撮影で忙しい中でも「自分の時間を作るのは割と上手」と笑う小芝が語った、連続ドラマへの思いと俳優としての本音とは。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「人と対話して寄り添う」新しい医療ドラマ

ーー原作や脚本を読んだ感想をお聞かせください。
小芝風花(以下、小芝):本作では天才的なドクターが出てきたりとか、すごく難しい手術をしたりっていうわけではないんです。病気を治すことだけじゃなくて、人と対話し、寄り添って、その病気が治った後の人生も見ていくっていうのがすごく新しいなと感じました。とても心が温かくなる作品だと思いました。
ーーご自身が演じる滝野みずきはどんな人物でしょうか?
小芝:とにかくまっすぐで、「何でも治せるお医者さんになりたい」という思いを胸に医師になりました。でも、大きい病院だとたくさんの人を見る必要があり、一人ひとりにかけられる時間もないという現実に直面して、「あれ? 自分がなりたかったお医者さんってこうだったのかな?」という理想とのギャップで悩みも抱えている女性です。

ーー役を演じるにあたって準備されたことを教えてください。
小芝:原作ではもともと柔道をやっていた設定なので、監督からは「スポーツ女子の雰囲気や、スポ根っぽい感じをもっと出してほしい」と言われましたが、難しいオーダーだと思いました(笑)。柔道をされている方は体幹がしっかりされているので、ちょっとした動きとか、走るときとかに体幹の良さが出たらいいなと思って、いま体幹トレーニングをやってみています。
松本潤は「兄貴肌」で現場を引っ張る存在

ーー初共演となる松本さんの印象をお聞かせください。
小芝:兄貴肌って感じですね。スタッフの皆さんともコミュニケーションを取られていて、「行くよ!」と声をかけてくださるので、すごく活気のある現場だと思います。
ーー滝野にとって徳重はどのような存在でしょうか?
小芝:滝野は「患者さん一人ひとりと向き合いたい」という志を持ってきたものの、たくさんの人を見なきゃいけないという現実を知り、「一人ひとりにしっかりと割く時間がない」ことを痛感します。「診察の持ち時間は1人10分だから」と2年間研修を受けて、「もうこうなるしかないのかな」と諦めかけていたときに徳重先生に出会うんです。「私がなりたかったお医者さんってちゃんと一人ひとりの患者さんと向き合う人だ」と、自分がなりたかったお医者さん像を思い出させてくれる人であり、改めて「こういうお医者さんになりたい」と思わせてくれた人だと思います。

ーー小芝さん自身にとって、徳重のような存在の方はいますか?
小芝:いろんな現場で少しずつ教えていただいていると思います。それこそ「お芝居はキャッチボールだよ」って昔教えてくれた人がいて、今もお芝居をする上で大事にしています。セリフって本当はキャッチボールだから、ただ喋ればいいだけではなくて、どういう感情をもらって、どういうふうに心が動いたから、どういう感情を返すのか。「台本ってきっと10人が読んだら10人とも違う感想を持ったり、捉え方が全部違っているはずだから、それを現場で合わせることで新しい化学反応が生まれるのがお芝居なんだよ」と教えていただいたこともすごく記憶に残っています。
ーー現場での化学反応、ですか。
小芝:あと、ある作品のオーディションの時、プロデューサーさんに「風花ちゃんは今両手に何かをいっぱい持ったままでオーディションに来ている。準備をたくさんしてきたからこそ、“こういうふうに見せたい”という思いを持ちすぎている。だからオーディション会場とかその現場で掴めるものがない。いっぱい持っていたら他のものを掴めないから、なるべくすっからかんの状態で、現場で欲しいものをすぐに取れるようにしていたほうがいいよ」と言われたこともすごく印象に残っています。その作品には出られませんでしたが、得たものが多かったオーディションでした。

ーー本作でも共感する部分があったのではないでしょうか?
小芝:やっぱり理想と現実が違うというのは、私も含めたくさんの人が共感する部分なのかなと思います。周りの同期と比べて、自分だけなかなか上に行けないこともあるだろうし、自分が昔立てていた予定では「このぐらいの年齢ではこうなっていたはずなのに」と、原因もわからずにただただ悩んだり……。行動しようにも今の現状や目の前のことに精一杯で、なかなか新しいことに挑戦する時間とタイミングがない葛藤というのは、いろんな人に共感してもらえそうだなと思います。
ーー小芝さん自身もそういう時期があったんですね。
小芝:特に10代の頃はそうで、周りの人と比べて「この役をやりたかったな、なんで私はもらえないんだろう」と感じていましたし、「どうしていいかわからない」という時期もありました。目の前のことで精一杯になりすぎて、そもそもの目標を見失ってしまう時期とかもあったりして。滝野自身もきっと胸はざわつくし、「これじゃない」っていうのはわかっているけど、目の前の作業に追われてしまってどうすることもできないという葛藤があって。その中で徳重先生と出会い、「自分はやっぱりこういうお医者さんになりたかったんだ」という気づきをもらえるんです。



















