『ちはやふる-めぐり-』は“2つの青春”が同時進行する稀有な作品 “めぐる”物語が運ぶ輝き

『ちはやふる-めぐり-』が描く2つの青春

 数多ある学校を舞台にした青春ドラマの中で本作が異彩を放っている1つの理由として、生徒たちが主人公であると同時に、教師である奏の物語も濃密に描かれていることが言える。しかも彼女が心の拠りどころとしている「青春時代は、競技かるたに身を尽くして全国大会にまで出場した」という事実、その「どんな高価な宝石よりも輝いているあの3年間」の記憶を、映画版3部作を通して多くの視聴者が知っているために、説得力は自然と増す。

 現在の奏は「なりたい自分になれていない」という現状を抱えつつ、競技かるた部の顧問として教えることへの喜びを見出し、時に、「読手」としての技術向上のため、自身の特訓に夢中になりすぎる一面があるなど、愛すべき一面を持っている。だから本作は、「かるたで宝物を見つけられた人はその10年先で絶対に、明るい未来が待っているんだって、私に見せてください」という第2話のめぐるの言葉に懸命に応えようとする奏を通して描く「青春のその後」の物語と、めぐるたちを中心にした今の「青春」の物語が同時進行で描かれる稀有な作品と言えるのだ。

 本作の興味深いところは、千早が顧問であり、千早と雰囲気が重なる「漫画の主人公みたいな」凪や、高校生ナンバーワンの実力の持ち主である懸心(藤原大祐)といったスター性溢れる2人が揃う瑞沢高校ではなく、梅園高校競技かるた部を中心に置いたところだ。

 それぞれに挫折を経験し、「空っぽな自分」を抱えつつ、「青春」に魅せられ、渇望しつつも「私にはもったいない」「ここから見てるぐらいがちょうどいい」と一線を越えることに躊躇するめぐる、風希(斎藤潤)、千江莉たちが、草太(山時聡真)、春馬(高村佳偉人)とともに競技かるたにのめり込んでいく話であることが、令和版『ちはやふる』の素晴らしさであり、多くの、「青春」を眩しく感じたことのある人の心を掴んでいると思う。

 そしてそれが『妻、小学生になる。』(TBS系)から、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系)、『ケの日のケケケ』(NHK総合)、『リラの花咲くけものみち』(NHK総合)と実績を積んできた當真あみの、時にままならない世界と対峙する憂いと繊細さを併せ持つ煌めく眼差しの、その先にあるものを予感させる作品になりつつあることにも、期待せずにはいられない。

『ちはやふる-めぐり-』の画像

ちはやふる-めぐり-

2016年から2018年にかけて公開された映画『ちはやふる』シリーズの10年後の世界を舞台にした作品。廃部の危機にある梅園高校・競技かるた部の藍沢めぐるが、顧問として赴任してきた大江奏と出会い、成長していく。

■放送情報
『ちはやふる-めぐり-』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:當真あみ、原菜乃華、齋藤潤、藤原大祐、山時聡真、大西利空、嵐莉菜、坂元愛登、高村佳偉人、橘優輝、石川雷蔵、瀬戸琴楓、髙橋佑大朗、藤枝喜輝、大友一生、漆山拓実、上白石萌音、内田有紀、要潤、榎本司、富田靖子、高橋努、波岡一喜、髙嶋政宏
ショーランナー:小泉徳宏
監督:藤田直哉、本田大介、松本千晶、吉田和弘
脚本:モノガタリラボ(小坂志宝、本田大介、松本千晶)、金子鈴幸
プロデューサー:榊原真由子、巣立恭平、中村薫、平田光一
企画・プロデューサー:北島直明
チーフプロデューサー:松本京子
音楽:横山克
主題歌:Perfume「巡ループ」(UNIVERSAL MUSIC LLC)
制作協力:ROBOT、ウインズモーメント
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/chihayafuru-meguri/
公式X(旧Twitter):https://x.com/chihaya_koshiki

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