『ちはやふる』から考える10年で変わった若者の価値観 Z世代にとって青春は“贅沢品”に

あの『ちはやふる』が、新たな形で帰ってきた。7月9日から日本テレビ系でスタートした連続ドラマ『ちはやふる-めぐり-』は、當真あみ演じるZ世代のヒロインを軸に、まったく新しい“かるた青春譚”を描いている。
今作の舞台は瑞沢高校ではなく、梅園高校。かつて広瀬すずが綾瀬千早として全身全霊でかるたに挑んだ映画版から約10年が経ち、青春をめぐる価値観そのものが変わったことを実感させられる第1話となった。
當真あみ、『ちはやふる』に重ねる想い明かす 「何かに熱中して取り組むことの尊さが伝わる」
劇場版シリーズ始動以来、10年ぶりに『ちはやふる』の世界が映像作品として帰ってくる。 2007年から2022年まで講談社『B…當真演じる藍沢めぐるは、高校2年生の幽霊部員。彼女はかるたにも部活にも興味がない。興味があるのは“未来の自分”だけ。趣味は投資で、朝食時にも、授業中にもチャートを吟味。目標はFIRE(経済的自立と早期リタイア)で日々の行動指針はタイパ(タイムパフォーマンス)であり、青春に全力を注ぐことは“贅沢”で、“青春セレブ”だと断じる。かるたの試合中に涙する部員たちに対しても、「なぜそこまで?」と首をかしげるばかり。常に一歩引いた立ち位置から物事を合理的に見つめるその姿勢は、今を生きる若者のリアルな“肌感覚”を反映している。

作中では、めぐるが「AIが反省文を書く時代に古文は必要なのか?」と疑問を呈する場面がある。効率と合理性を重んじる彼女の価値観からすれば、1000年前の言葉を学ぶことに意味を見いだせないのも無理はない。だがそれに対して、古文教師でかるた部顧問の大江奏(上白石萌音)は「今しかできない体験がある」と彼女を諭す。かるたを通じて、過去と現在、そして人と人が“めぐりあって”いく時間の尊さを、めぐるが体感していく展開が予感される。
FIRE志望、投資とバイトに邁進、残高の数字に一喜一憂……そんな等身大のZ世代が、かるたに青春を賭けるという“タイパの悪い”人生を選ぶ姿は、部活ものドラマとして逆説的に非常に現代的だ。

第2話では、「青春は贅沢だ」というめぐるの思考が、中学受験の失敗によって、親の期待や受験に費やしたお金、時間、友人関係すべてを無駄にしてしまったという“怒り”に根ざしていたことが語られたが、めぐるの愛読書が『敗者の品格』だったことからも、「負けの先にこそ人間の価値があること」が、作品の屋台骨であると示唆されている。
また、こうした心理描写とは別に、本作は競技かるたの躍動感という“原点”も丁寧に描く。高速で飛び交う札、息を呑む間合い、視線と指先の駆け引き――第1話からその臨場感がしっかりと再現されており、初心者の視点が導線として機能している点も、劇場版の王道演出を継承している。























