『あんぱん』“釜次”吉田鋼太郎の穏やかな最期 「よさこい節」が象徴する温かな絆に涙

その矢先、釜次が体調を崩してしまう。慌てる家族の中に、嵩(北村匠海)が見舞いに現れる。ぶっきらぼうながら、嵩の漫画に「くだらんのぅ。しかし面白い」と笑い声を漏らす釜次。その言葉にのぶは心を動かされ、嵩に「漫画を描いてほしい」と頭を下げる。嵩が釜次のために描いたのは、朝田家とあんぱんが登場する、どこか懐かしさとぬくもりの詰まった4コマ漫画だった。その漫画を見て、釜次は「バカだなあ」と笑いながらも、嬉しそうな表情を浮かべる。弱々しくなってもなお変わらぬ笑い声が、家族の空気をやさしく包み込んだ。けれど、同時に釜次の最期が近いということも誰もが薄々感じ取っていた。だからこそ、その笑い声はひときわ尊く、胸の奥にじんと響いてくる。

夕暮れ時、結太郎(加瀬亮)の帽子を手にした釜次は、静かに語りかける。「石屋は、自分の代で畳む」と宣言するその姿には、潔さと覚悟があった。そして、「女子こそ大志を抱けや」と、亡き結太郎がのぶたちに残した言葉を伝える釜次。「なりふり構わず走れ」という力強いメッセージは、まさに次世代に託す生き方そのものだった。その言葉を真正面から受け止めたのぶは、「釜次の孫で良かった」と涙を滲ませながらも、まっすぐに答える。その涙には、別れの予感と、それでも前を向こうとする決意が滲んでいたように見えた。

釜次のリクエストに応えて、のぶ、蘭子(河合優実)、メイコ(原菜乃華)の3姉妹が「よさこい節」を歌い上げる。その歌声は、家族の時間を祝福し、釜次の想いを受け継ぐ儀式のようにも感じられた。
「バカだなあ」と笑う祖父、「釜次の孫で良かった」と答える孫。言葉にできない絆が交差した第79話は、別れの予感と、それを超えて繋がる希望を、優しく丁寧に描き出していた。次回が恐ろしくなるほどに、美しく、愛おしい1話だった。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















