『あんぱん』吉田鋼太郎だからこそ演じられた釜次 強さと繊細さを併せ持つ名演を振り返る

NHK連続テレビ小説『あんぱん』の第78話では、のぶ(今田美桜)が制作に関わった『月刊くじら』を手に談笑する朝田家の面々が映し出された。その途中で、急に咳き込み「大丈夫だ」と言いつつ、憂いを帯びた表情を見せた釜次(吉田鋼太郎)の姿に胸騒ぎがした。そしてそれは、夜遅くにのぶとメイコ(原菜乃華)の家に蘭子(河合優実)がやってきたことで確信に変わってしまった。もう釜次に残された時間はそう多くはない。

父の結太郎(加瀬亮)が早くに亡くなったのぶにとって、釜次は強く頼れる大黒柱でもあった。のぶが「なりたいものが見つかった」と報告する時、次郎(中島歩)との結婚を決めたと言った時、そして教師の仕事を辞めたと言った時。釜次は必ず大きな居間の中心にデンッと座って、彼を家族が囲んでいた。まさに釜次が朝田家の「一家の長」であることが一目でわかる象徴的な場面だ。
高等女学校を卒業したら結婚するのが当たり前に時代に、のぶが「学校の先生になりたい」言った時には、「いかんいかんいかん!!」と猛反対した釜次。頑固一徹で昔気質なところがあるため、のぶの結婚しないという選択に対して世間体を気にしているのかと思いきや釜次は「羽多子さんに楽をさせてやらんといかんじゃろうが!」と叫んだ。もちろん世間体を気にしていないことはないだろうが、釜次は早くに夫を亡くしたのにも関わらず、朝田家を支えてくれている嫁の羽多子(江口のりこ)のことも考えていたのだった。ふとしたところに釜次の不器用な優しさが垣間見えるワンシーンだった。
『あんぱん』今田美桜×北村匠海の「たまるかー!」が気持ちいい のぶと嵩が見つけた夢
幼い頃から変わらない韋駄天っぷりを発揮し、パン食い競争で優勝を収めたのぶ(今田美桜)。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第13話で…また、釜次は「朝田石材店」三代目の石工職人であり、弟子を持つ師匠でもあった。弟子の豪(細田佳央太)は釜次から石工としての技術だけではなく、読み書きや計算を習っていたという。師匠というのは弟子が自分と同じくらいの技量を持つようになること、いや自分以上の職人になることを望んでいるものだ。釜次は口にこそ出さないが豪を自分の跡継ぎとしてしっかり育てるつもりだっただろう。






















