『鬼滅の刃』柱稽古とは何だったのか? 『無限城』に備えてどんな能力アップがあったか分析

『鬼滅の刃』に登場する鬼には、そもそも疲労や負傷や老いという概念がない。日の光にさらされるか、日輪刀で首を斬られない限り、死ぬこともない。何百年でも何千年でも生き続ける。それは、名もないザコ鬼であっても同じである。
対する鬼殺隊の面々は、みな生身の人間だ。疲労が蓄積すれば動きも鈍るし、ケガをすれば治療の必要があるし、加齢とともに技も衰える。そして、致命傷を負えば、あっけなく死ぬ。そんなあまりにも脆弱な人間が、鬼と戦うにはどうすればいいのか。
実は、『鬼滅の刃』第1シーズン『竈門炭治郎 立志編』のごくごく序盤でその答えは出ている。かつて鬼殺隊を目指した少女・真菰が、笑顔で炭治郎に言い放つ。「死ぬほど鍛える。結局、それ以外にできることないと思うよ」。
炭治郎、善逸、伊之助らが“死ぬほど鍛えられる”、『特別編集版「鬼滅の刃」柱稽古編』が7月16日にフジテレビ系で放送される。柱稽古とは、平隊士たちが柱を順番に巡り、その都度血尿が出るような稽古をつけられるというありがたい試みである。決して皮肉っているわけではない。初期・炭治郎のエピソードや善逸の回想でわかるように、みな隊士になる前は“育手”のもとで死ぬほど鍛えられる。しかしいざ隊士になってみると、“継子”になれる有望株以外は、どうも稽古をつけてくれる指導者がいなさそうである。平隊士が合同稽古をしている様子もないし、基本的に各自の自主トレにゆだねられているようだ。
そのような練習環境で、鬼相手の命を懸けた圧倒的に不利な戦いに駆り出される隊士たちが、不憫でならない。現役の柱が多忙であるならば、引退した柱などがコーチ役を買って出れば良かったのではないか。今回の、元音柱・宇髄天元のように。元炎柱・煉獄槇寿郎(煉獄杏寿郎の父)がすっかりやさぐれてしまっていたのも、もったいない話だ。
だが、いざ柱が直々に稽古をつけてくれることとなり、みなさぞ喜んでいるだろうと思ったら、そうでもないようだ。喜んでいるのは、ポジティブお化けの炭治郎だけだった。ほとんどの隊士は、善逸のように「誰なんだよ、考えた奴。死んでくれよ」と思っているようだ。ちなみに発案したのは岩柱・悲鳴嶼行冥なので、瞬殺されるのは善逸のほうである。
こうして始まった柱稽古だが、各柱が、強くなる上で何を重要視しているのかがよくわかり、面白い。彼らの練習メニューは、「フィジカル向上」と「実戦力向上」に二分される。フィジカル重視は、宇随、悲鳴嶼、恋柱・甘露寺蜜璃たち。実戦重視は、霞柱・時透無一郎、蛇柱・伊黒小芭内、風柱・不死川実弥たちである。実戦重視の蛇柱と風柱の稽古に関しては、以前書いた。
『鬼滅の刃』不死川実弥と伊黒小芭内は“最も優しい”柱? 稽古時に見えた隊士への愛
放送中の『鬼滅の刃』柱稽古編。この話は、原作コミックスだと1巻分ぐらいの尺しかない。「刀鍛冶の里編」からクライマックスである「無…今回は、フィジカル重視の柱たちについて、深掘りしたいと思う。
まず宇髄による基礎体力向上訓練。自重トレーニング+ひたすら走り込みである。疲労という概念のない鬼に対して、人間は必ず疲労する。だが、鍛錬により限りなく疲労感の到来を遅らせることはできる。勝てなくとも、日の出まで勝負を引っ張ることができれば、結果的に勝ちを拾うことはできる。要は、一晩中戦い続けられるだけのスタミナをつけることだ。そのための、無限走り込みである。
事実、宇髄の長いストライドや発達した上半身、特に腕を振る際に必要な肩の筋肉を見ると、我々の想像を超えた走り込みを積み重ねてきたと思われる(ストライドに関しては先天的要素が大きいが)。ウサイン・ボルトのようなシルエットだ。忍時代に、「走り切れなかったら死ぬ」ような鍛錬を受けてきたのではないか。
隊士全員上半身裸で走っているのを見る限り、それなりに暑い時期の鍛錬だと思われる。そこは宇髄夫人3人が、塩分補給のための濃いめの味噌汁と、早くエネルギーに変換される炭水化物のおにぎりを大量に用意してくれている。疲労困憊で食事が喉を通らない隊士に対して宇髄は、「メシ残した奴、稽古の量増やしとくからな!」と言い放つ。これも宇髄流の優しさである。無理にでも食べないと、確実に以後の鍛錬についていけない。熱中症の恐れもある。
『遊郭編』で一度は炭治郎たちに戦線離脱を忠告したように、宇髄は誰よりも優しい柱だ。作戦遂行のためには犠牲も致し方なしという考えは、持っていない。派手な見た目と口の悪さで、損はしているが。
宇髄による基礎体力向上訓練の発展形が、岩柱・悲鳴嶼行冥による筋肉強化訓練だ。今度は、自然物を利用したヘビーウエイトトレーニングである。まずは、空気椅子の状態で一刻(約2時間)滝に打たれ続ける訓練だ。やってみたらわかると思うが、初めて空気椅子をやった人は、1分ももたないだろう。それを2時間続けるだけでも驚異的だ。しかも、炭治郎曰く「体の力抜いたら首が折れそう」なほどの重い水流を受けながらである。超々高負荷の空気椅子である。






















