藤木直人、“キャリア30年目”で魅せる俳優像 『花より男子』から『最後の鑑定人』へ

映画はもとよりテレビドラマというのは、どの俳優が主演を務めるのかで、その作品のおおよそのカラーが決まってくる。得意とする演技のタイプはもちろんのこと、本人のパブリックイメージが作品に大きく影響してくるものだ。その俳優が主演でなければ企画が成立しない、なんてことも多々ある。むしろこのような深度の作品でなければ、現代の目の肥えた視聴者を満足させることはできないだろう。7月期のドラマではいったいいくつ、そんな作品があるだろうか。
藤木直人が主演を務めるドラマ『最後の鑑定人』(フジテレビ系)は、まさにそういった作品である。世代によって藤木に対するイメージはさまざまだろうが、彼こそ特有のカラーを持った俳優だといえるのではないだろうか。
この『最後の鑑定人』とは、かつて科学捜査研究所のエースとして活躍し、「最後の鑑定人」と呼ばれていた主人公・土門誠(藤木直人)が科学的アプローチを駆使して難事件を解決に導いていくさまを描くサイエンスミステリーだ。なぜ土門が「最後の鑑定人」と呼ばれているのかというと、「土門に鑑定できないなら、他の誰にも鑑定できない」とまで言わしめ、科捜研最後の砦とされていたから。つまりは科学捜査の世界において、彼はトップ・オブ・トップなのである。

これだけ記せば、土門がいかにエリートな人物なのか分かるだろう。しかし、いや、やはりというべきか、彼はかなりの変わり者。番組公式サイトの人物紹介欄には“無駄な世間話を好まず無愛想で人に興味なし。徹底した合理主義者で、時には空気を読まない物言いで接する者を不快にさせてしまう奇人。”と記されている。変わり者というよりも、関わるべからざる者というべきか。けれども難事件では誰もが彼を頼らざるを得ない。ここに、ドラマが生まれるわけである。

演じる藤木は、声の質感や、大小高低といったトーン、さらにはスピードまで抑揚をつけながら的確にコントロールしている。土門はプライベートではどこか少年のようだが、事件となるとピリッとしたものが表情に走るのが分かる。どことなく顔つきが変わるのだ。これらに触れた瞬間、私たちはこの物語の主人公が土門誠であると真に理解する。そして、このドラマの主演が藤木直人なのだと。





















