『ドールハウス』『見える子ちゃん』など 2025年に誕生した異なる3タイプの傑作“Jホラー”

次に『ドールハウス』は、『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』などの青春映画で知られる矢口史靖監督が手がけた人形ホラー。愛する娘を亡くした佳恵(長澤まさみ)が、娘に似た人形に愛情を注ぐようになり、やがて恐怖のドン底に叩き落とされる。
この作品で特筆すべきは、静謐な恐怖から動的なエンタメへとギアチェンジする、「②ひとつの映画のなかで次々と恐怖表現が切り替わるJホラー」であることだ。「これは現実か? それとも妄想か?」のキワキワを攻める巧みな演出で、観る者に不穏さを植え付けていくニューロティックホラーで始まり、悪魔の人形がついにその本性を現して『チャイルド・プレイ』や『M3GAN ミーガン』のような展開になり、呪禁師の神田(田中哲司)が登場してからは、さらにもう一段ギアが切り替わって本格バトルが繰り広げられる。

あの手この手で怖がらせる、幕の内弁当的な面白さ。インスタントカメラのストロボが閃光を放つたび、人形が瞬間移動したかのようにじわじわ近づいてくる演出は、矢口監督の技のデパートぶりが遺憾無く発揮されている。
そして、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。近藤監督がノーCG、ノー特殊メイク、ノージャンプスケアを目指したと公言する本作は、これまでJホラーが培ってきた伝統的要素を深く掘り下げ、恐怖の対象をとことん“映さない”ことで「想像力に訴えかける恐怖」をより深化させた一本。「③90年代からの伝統を受け継ぎつつ、さらに濃度を高めたJホラー」だ。
近藤監督は、テレビ東京のフェイクドキュメンタリー番組『TXQ FICTION』で、『飯沼一家に謝罪します』、『イシナガキクエを探しています』の演出を担当した実績の持ち主。『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』の大森時生や、『フェイクドキュメンタリーQ』の寺内康太郎も参画しているこの番組には、新しい恐怖の作り手たちがアベンジャーズのように集結している。彼らによる作品は、今後Jホラーの歴史を大きく更新していくことだろう。
8月8日に公開予定の『近畿地方のある場所について』も、今から超楽しみな1本。「このホラーがすごい!」国内編1位に輝いたホラー作家・背筋の小説を、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズの白石晃士監督が映像化。おそらく、「③90年代からの伝統を受け継ぎつつ、さらに濃度を高めたJホラー」の新たな地平を切り開く傑作になるのではないだろうか。
おそらくこれから先も、Jホラーは我々の日常に潜む普遍的な恐怖を掘り起こし、日本中……いや、世界中の観客を魅了し続けることだろう。どのような進化を見せてくれるのか、今後もその展開から目が離せない。
参照
※ https://www.eiren.org/toukei/





















