ミジとホスの“初めてのお泊まり”にドキドキ 『未知のソウル』が提示する“居場所”の在り処

『未知のソウル』ミジとホスの“お泊まり”

 自分をありのままに受け入れてくれ、何を言っても否定されずに安心できる「人間関係」や、無理をせずに自分らしくいられる「空気感」。ひとりで居ても「心が落ち着く時間」や、理解されなくても自分を肯定できる「内側の声」、そういったものが“居場所”のこともあるだろう。現実世界でなく、本やアート、自然に“居場所”を見出すこともあるだろう。ミレが公社で透明人間のように扱われ、そこに「居ない」ものとして扱われたことから始まった物語だったが、ミジもホスもセジンも母たちも、さらにサンウォルにも居場所がなかったことが明かされた。

 玉ねぎの皮を剥いても剥いても中身が出てくるように、次々と出てくるエピソードの一つひとつが深く、心に浸透していく。ロサが、サンウォルに遺した、「時間がかかっても、あなたを読み解いてくれる人が現れるわ」という言葉は、人生のお守りとなるような珠玉の台詞だ。登場人物それぞれに出会いがあり、彼、彼女らを読み解いてくれる人が現れる。ミジとホス、ミレとセジン、そしてサンウォルにはミジとホスが現れた。現代を生きる、今、「居場所がない」と感じている人たちにも、それはあなたに価値がないからではなく、まだ適した場や人に出会っていないだけなのだとこのドラマは優しく伝えてくれる。

 サンウォルとの関係で涙し、田舎に帰ると言うミジに、ホスが「君がいる場所が居場所だ、理由は僕と作ればいい」と声をかけるのだが、この言葉がまさに“居場所”の真理ではないだろうか。そこに居るだけでいい、あなたが必要だ。というホスの声は、この時点でのミジには響かず、「ここが私の居場所だと思えない、ソウルには私の居場所がない」と答える。この言葉は、ソウルに居るホスにはどう映ったのだろう。ミジの言葉には、彼女にとっての“居場所”とはミジの内面の問題であり、自分との関係性なのだということが含まれている。このときのホスはなんともいえない表情で、観るものの数だけ捉え方はあるだろう。

 最後にオープニングとエンディングに触れて締めくくりたい。オープニングにはブラウンとホワイトのテディベアが出てくる。エンディングでは、綺麗な白のイスにユ・ミレと名前が書いてあり、その隣にはユ・ミジと書かれた武骨ながらも温かみのある古びた木製イスが並んでいる。エピソード1のエンディングでは、茶色のミジのイスに白のミレのベアが座っている。ミジのイスにミレが入れ替わったということを示している。エピソード2から6までは、白のイスに茶色のぬいぐるみ。これはミレに扮したミジを中心に描かれていることと符合する。エピソード7では、両方のイスにふたつともぬいぐるみが座っている。エピソード8ではまたミジ中心だが、9ではエピソード1と同じくミレ中心となっている。そして、今回のエンディングではイスのみが置かれており、ぬいぐるみはないという初めての構成となった。

 椅子から立ち上がったぬいぐるみをメタファーとするならば、ミジとミレのそれぞれが居場所を見つけて歩みだしたと解釈できる。彼女たちの行く末とともに、気になるのがホスだ。ラストでホスに起こった悲劇に胸を締め付けられる。ホスの片側だけ聴こえていた耳に異変が起こった。エンディングのあとのラストカットは、ホスが最後にミジの声を耳にした場面ともとれる。ミジの話しぶりはとてもキュートで、これが最後であってほしくないと涙がこぼれる。

 泣いたり笑ったり、時には癒されたりと視聴者の感情を翻弄させていたこのドラマも、いよいよ来週には終わってしまう。どうか、ミジ、ミレ、ホス、セジン、そしてオンマたちとハルモニ(韓国語で祖母)の笑顔で幕を閉じてほしいと強く願っている。

■配信情報
『未知のソウル』
Netflixにて配信中
出演:パク・ボヨン、パク・ジニョン、リュ・ギョンス
演出:パク・シヌ
脚本:イ・ガン
(写真はtvN公式サイトより)

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