『あんぱん』終戦の日まで怒涛の展開を迎えた第12週 今田美桜が渾身の芝居で伝えた“絶望”

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第12週「逆転しない正義」は、中国・福建省に駐屯する嵩(北村匠海)が宣撫班として健太郎(高橋文哉)とともに紙芝居「双子の島」を制作するところから、玉音放送が流れる終戦の日までが描かれる。
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第56話から第59話まで、つまりは月曜から木曜日までの放送にはヒロインであるのぶ(今田美桜)が第11週に引き続きほとんど登場せず、タイトルバックも「北村匠海」の名前が先頭に。そのタイトルバックすらもカットし、親の敵である岩男(濱尾ノリタカ)に復讐を果たすものの自分にとっての“優しい先生”だったことに気づくリン(渋谷そらじ)、戦争へのやり場のない怒りを爆発させる八木(妻夫木聡)、嵩の夢枕に立つ清(二宮和也)が伝える「お前は父さんの分も生きて、みんなが喜べるものを作るんだ」というメッセージで、無慈悲な戦争と未来へと繋がる希望の光を描いた、圧巻の15分だった。
続く第60話は、のぶサイドから、「高知大空襲」を通じて戦争の残酷さを伝える回。次郎(中島歩)からの便りに目を輝かせるのぶだったが、それは海軍病院から。次郎は肺浸潤、つまりは肺病にかかり、戦地から戻ってきていた。次郎は兵隊や軍需物資を運ぶ軍用の輸送船に乗っていたが、戦地での話は一切しようとはしない。そこには嵩たちとはまた別のつらい思いがあったことは、想像に難くない。

次郎のことを朝田家の家族に報告し御免与から高知に戻っていくのぶ。ここで印象的なのはのぶと羽多子(江口のりこ)、蘭子(河合優実)、メイコ(原菜乃華)が何気なく交わす「ほいたらね」という挨拶。週終わりに語りの林田理沙アナウンサーが様々なニュアンスで視聴者に告げる言葉でもあるが、それは「じゃあまたね」という“また”があるという、当たり前でいて、当たり前でないことが浮かび上がってくる。