池田エライザ「自分のことを考える時間にしてもらえたら」 『舟を編む』で得た“言葉”とは

2024年にNHK BSで放送されて高い評価を得たドラマ『舟を編む ~私、辞書つくります~』が、NHK地上波で放送される。5月には、ドイツ・ベルリンで開催されたワールドメディアフェスティバル2025にて、金賞に輝いたことも記憶に新しい同作。
原作は、2011年に単行本が発売された三浦しをんの小説『舟を編む』。ある出版社での辞書作りの世界を舞台に、そこに生きる人々の情熱と、言葉の意味や魅力を感じさせる物語は、多くの人に支持され、2013年に映画化、2016年にはアニメ化された。
そして2024年のドラマ版では、主人公を原作の馬締光也ではなく、岸辺みどりに引き継ぎ、その物語が紡がれた。放送にあわせ、主演を務める池田エライザに話を聞いた。(望月ふみ)【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「相手のために言葉を選ぶって、その過程に愛情があるんだと気づきました」

――今回、地上波で放送されると発表があったとき「好きな作品だから嬉しい!」と大変な反響がありました。
池田エライザ(以下、池田):ありがたいです。もともと原作のある作品ですし、映画化もされているしアニメ化作品もある。でもこの作品も10何年の間、プロデューサーさんがずっと温め続けていた企画で、それがすごく良い時期に良い巡り合わせによって形になったことで、新解釈ということではなく、この10数年分の思いを乗せている気がして、その丁寧さにもやられました。だって正直、すでに映画版もあるというと、スピンオフ的な感じにもなりかねないし、怖いですよね。だけど、最初から「これはみどりちゃんの物語なんだな」と思えました。
――池田さんは常々、本をお好きだとお話されていますし、当初からみどりちゃん役もぴったりだと感じましたが、改めて、この作品を経験したことで、言葉への向き合い方に変化はありましたか?
池田:言葉を選ぶって、愛なんだなと気づきました。自分の気持ちを伝えるときに、相手のために言葉を選ぶ。その過程に愛情があるんだなと。配慮とかじゃなくて、愛だなって。それがこの作品に取り組んで出た答えです。だから、意地悪を言うくらいなら、ありったけの愛を込めた言葉を選んで使うほうが、やっぱり幸せだなと思いました。

――みどりちゃんに気付かされたことや、得た感覚はありますか?
池田:みどりちゃんの生命力やエネルギーです。腐っても腐りきらないかわいらしさというか(笑)。私は腐ったら腐りきって、それを全部メモに書くみたいなところがあるんですけど、みどりちゃんは踏ん張り方が上手だし、壁にぶつかっても、その壁をパッと見上げて、「よし、駆け上がるぞ! でもその前に、一度みんなに相談しよう!」となる。その過程が全部かわいいし、自分が取らない選択肢を持っている気がして、パワーを感じましたね。アルバイトの充くん(前田旺志郎)に舌打ちされたときに、ちゃんと怒りの表情で返せるのもかわいい。私ならショックを受けて見なかったことにしちゃう。辞書を渡されて「読んでおいて」と言われて「読みません」って言ったり。
――(笑)。
池田:脚本の蛭田直美さんのディテールのそうした細かさ、そもそも持っているみどりちゃんの強さみたいなものが、みどりちゃんをさらに立体的にしていると感じます。それから、原作者の三浦さんにお会いした時、三浦さんの“生きてる感”をすごく感じたんです。

――生きてる感?
池田:変な表現ですけど(苦笑)。人生を本当にしっかり生きている人だなと。なんとなく小説家の方って、ちょっとお堅い感じとか生真面目な方なのかなと想像してしまう節があったんです。それが三浦さんは、すごくエネルギッシュな方で。スカジャンに赤いリップで現れた。本当にカッコよくて、覇気がすごかったんです。人生をしっかり生きている人だから、登場人物が、こんなに豊かに生まれてくるんだろうなと。三浦さんから馬締さんやみどり、香具矢さんが生まれたのは納得でした。