横浜流星だけじゃない! 阿部寛、松田元太、間宮祥太朗ら春ドラマの“べらぼう”な男たち

春ドラマを彩る“べらぼう”な男たち

 大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)にて、横浜流星が江戸の世と令和の時代を結ぶべく駆け回っている2025年。今期のドラマでは横浜が演じる主人公・蔦屋重三郎のような“べらぼう”な男たちが奮闘しているのが印象深い。ここでは、阿部寛、松田元太、間宮祥太朗らが体現する“べらぼう”な男たちにフォーカスしたい。

 横浜が主演を務める『べらぼう』は、吉原の貧しい庶民の子に生まれた蔦重こと蔦屋重三郎が、“江戸のメディア王”に成り上がっていくさまを描き出すもの。蔦重は次から次へと湧き出る独自のアイデアで、江戸の世の人々の価値観に揺さぶりをかけていく。そんな彼に対して人々は「べらぼうめ!」と叫ぶ。そう、“べらぼう”とは常識外れな蔦重に向けられるもの。これをポジティブなかたちで捉えたものが作品のタイトルになっている。

『キャスター』阿部寛

日曜劇場『キャスター』©TBS

 さて、今期の“べらぼう”な男たちを演じる者について思いをめぐらせたとき、誰もが真っ先にその名を挙げるのが阿部寛だろう。主演ドラマ『キャスター』(TBS系)で彼が演じているのは、公共放送の社会部記者などとしてキャリアを積み上げ、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』のメインキャスターに就任した進藤壮一だ。「世の中を動かすのは真実!」という信念を持つ男で、旧来の報道の常識をぶっ壊し、真実を暴き出すためなら手段を選ばない。まさに“べらぼう”な男である。

 阿部の演技は硬い質感で、どことなく野性みのあるもの。進藤はテレビに出る人間とあって、威厳と品位を保っているが、腹の内は誰にも明かさず、いつ暴れ出すか分からない(“暴れる”というのは比喩だ)。『キャスター』にはさまざまなバックグラウンドを持つ演技者が揃っているが、“阿部寛=進藤壮一”の登場時に生まれる緊張感には特別なものがある。これは今後ますます強く濃くなっていくことだろう。

 今作を放送している「日曜劇場」といえば、骨太な作品のラインナップで知られている。阿部が同枠で主演を務めるのは6回目のことであり、彼こそ日本が誇る“べらぼう俳優”だろう。ちなみに、柳楽優弥と田中泯がダブル主演で葛飾北斎を演じた『HOKUSAI』(2021年)で蔦屋重三郎に扮していたのはほかでもなく、俳優・阿部寛なのだ。

『人事の人見』松田元太

『人事の人見』©︎フジテレビ

 Travis Japanの松田元太が主演を務める『人事の人見』(フジテレビ系)は、大企業の“人事部”にフォーカスしたオフィス・エンターテインメントである。古い体質の残る「日の出鉛筆」の人事部に、おバカでピュアな主人公・人見廉(松田元太)が現れたことで物語は動き出した。彼は一般的な常識さえ欠けている、まさに“べらぼう”な人物。けれども、『キャスター』の阿部とはまるでタイプの異なる存在だ。

 人見は愛すべきおバカキャラ。いつだって明るく、他者に対する思いやりの心が強い。彼にはおそらく正義感のようなものはなく、困っている人がいたら純粋に放っておけないタチなのだ。松田の快活な演技は観ていて非常に気持ちがいい。この手の底抜けに明るいキャラクターを演じる際、俳優はある程度の無理をしなければならないだろう。本人がおとなしい性格ならばなおさらだ。けれども松田が体現する人見像には無理がない。本作の脚本家は松田本人にヒアリングを行い、当て書きによって人見廉というキャラクターを生み出したのだという。彼こそ令和の時代における理想のヒーロー像かもしれない。

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