豊嶋花×清乃あさ姫がみせる演技の成熟 『なんで私が神説教』10代俳優の新たな存在感

『神説教』豊嶋花×清乃あさ姫の存在感

 現在放送中の『なんで私が神説教』(日本テレビ系)は、“元無職”の高校教師・麗美静(広瀬アリス)が、生徒たちの問題に“説教”で向き合っていくという型破りな学園ドラマだ。コメディタッチをベースにしながら、教育現場の理不尽や若者たちの葛藤を丁寧に描き出し、単なるお説教ドラマにとどまらない人間ドラマへと昇華している。

 そんな本作で強い印象を残しているのが、内藤彩華を演じる豊嶋花と、綿貫陽奈を演じる清乃あさ姫だ。いずれも10代の若手俳優だが、彩華と陽奈という真逆のキャラクターに“リアル”を吹き込むその演技力はお見事。物語の中心である「説教」の説得力を支える存在として欠かせないふたりの現在地と、その魅力をひも解きたい。

 豊嶋が演じる彩華は、クラスで「いじられキャラ」として描かれる存在だ。明るく振る舞うものの、その笑顔の奥には常に自己否定や不安が透けて見える。空気を読み、場をなだめ、笑って受け流す。その姿は一見、周囲との調和を保つ手段にも見えるが、実際は“自分を守るための仮面”でもある。特に第5話では、1年前の喫煙疑惑が再燃し、自分だけが退学処分を受けそうになるという理不尽な展開に直面する。家庭環境の違いという“目に見えない線引き”によって孤立させられていく過程で見せた涙と、無理に作った笑顔のギャップが痛々しく、観る者の心を強く揺さぶった。

 子役時代から豊富なキャリアを持つ豊嶋は、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)で松たか子演じる主人公の娘・唄役を好演し、ギャラクシー賞を受賞した作品の中で大人びた目線のセリフ回しと存在感を残した。さらにNetflix映画『新幹線大爆破』では、修学旅行中に事件に巻き込まれる女子高生役で極限状態の心理を体現し、高く評価された。

 そんな豊嶋が今作で挑んでいるのは、“等身大の高校生”という最も難しい役どころだ。等身大であるがゆえに誇張ができず、ちょっとした違和感がキャラクターを壊してしまう。そのなかで、豊嶋は“ただのいい子”に見せることなく、彩華という少女の複雑な輪郭を丁寧に浮かび上がらせている。

 また、本人も「高校生の気持ちでリアリティのある素敵なクラスをみんなで創り上げていきたい」と語っているように、現実と地続きの温度感を意識して役に向き合っている(※)。10代の視線と感性をまといながら、確かな技術と経験値で魅せるその演技は、いまの豊嶋だからこそ出せるリアルな表現だ。

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