ルカ・グァダニーノ、『クィア/QUEER』は「今日の子供たちと明日の子供たちのための映画」

『クィア/QUEER』ルカ・グァダニーノが語る

 5月9日より新宿ピカデリーほかにて全国公開されるダニエル・クレイグ主演映画『クィア/QUEER』より、ルカ・グァダニーノ監督のコメントとメイキング写真が公開された。

 本作は、『君の名前で僕を呼んで』のグァダニーノ監督が『007』シリーズのクレイグとタッグを組んだラブストーリー。ウィリアム・S・バロウズの自伝的小説が原作となっている。

 1950年代、メキシコシティ。退屈な日々を酒や薬でごまかしていたアメリカ人駐在員のリー(ダニエル・クレイグ)は、若く美しくミステリアスな青年ユージーン(ドリュー・スターキー)と出会う。一目で恋に落ちるリー。渇ききった心がユージーンを渇望し、ユージーンもそれに気まぐれに応えるが、求めれば求めるほど募るのは孤独ばかり。ある日、リーは一緒に人生を変える奇跡の体験をしようと、ユージーンを幻想的な南米への旅へと誘い出すが……。

 グァダニーノ監督がバロウズの原作小説と最初に出会ったのは、パレルモで暮らしていた10代の頃で、映画としての可能性があるとすぐに感じ取ったという。そして、21歳の時から、映画化を着々と進めてきた。彼がかなり前に執筆した脚本は、フロッピーディスクに保存されて今もどこかにあるそうだ。「小説を読んで衝撃を受けた。僕はバロウズの分身である主人公のウィリアム・リーにすっかり引き込まれたんだ。バロウズの作品の中で、もっともよく知られている小説だが、当時の自分の中にあった想いが、僕とこの作品を結びつけた。それは、可能な限り深い部分で理解し合える人物と出会いたいという強い思いだ」と原作小説との出会いをグァダニーノ監督は振り返る。また、「映画の仕事を始めてからずっと、小説『Queer』の映画化を夢見ていた。僕にとってこの映画は、作者の自伝以上のものだ」と強い思い入れを明かし、「この物語には、愛を求めてやまない、真にロマンチックな人物が登場する。バロウズの原作に基づき、バロウズを描いた、感動的で感情の嵐を巻き起こすような映画は、これまでにまだ作られたことがない。僕にとって映画『クィア/QUEER』は、特定の世代から別の世代への愛の物語、つまり今日の子供たちと明日の子供たちのための映画なんだ。僕が観客に期待することは、人とのつながりが薄れているこのデジタル時代に、ウィリアム・リーの苦悩とユージーン・アラートンへの大きな愛を感じ取り、人を深く一途に愛することに身を捧げる美しさを、2人の絆から学んでくれることだ」と本作に希望を託したという。

 2022年、『チャレンジャーズ』の制作中に、本作の映画化権が利用可能になり、それまで何年も権利取得に苦労していたグァダニーノ監督は、直ちにこの小説の映画化権を取得した。彼はすでに、数十年前に映画の脚本を書いていたが、今回は『チャレンジャーズ』の脚本を執筆したジャスティン・カリツケスに声をかけた。グァダニーノ監督は、「ジャスティン(・カリツケス)は、僕が映画にしたいと思っていた作品に、素晴らしい脚本を書いてくれるだけでなく、思想や考え、夢を分かち合える友人なんだ」と抜擢した理由を語り、『チャレンジャーズ』の制作で1年半もの時間を掛けて築いた信頼関係を明かした。

 グァダニーノ監督はカリツケスに対し、「何とかウィリアム・リーの物語を完成させてほしい」と、無謀な要望を出した。小説『Queer』を脚色するにあたって、カリツケスの前に最初に立ちはだかった難題は、未完成の作品だということだった。「小説『Queer』は、とても具体的な時と場所を舞台にしている。その中心にある、切望、孤独、人が他者に求めること、つまり人が自分のためにできることや、自分のためするべきことには限界があるというテーマは、普遍的だ。ラブストーリーだと感じられないところもあったが、基本的には愛に関する物語だ。僕が執筆活動を始めて以来、ずっと模索してきたことについて語っている本なんだよ」と、カリツケスは説明。そして、「2人の天才アーティストの間の橋渡しをするのが僕の仕事なんだと理解した。その1人は、僕がよく知っていて、兄弟のように愛している人。もう1人は、厳しく、繊細で、美しい作品を後の世代に残してくれた人で、僕はその作品を通して彼のことを知ろうとしている。バロウズとバロウズ作品のレガシーに、こういう形で関わることができるのは、名誉以外の何ものでもない」と感謝を述べた。

 グァダニーノ監督は、何年もの時を経る中で、バロウズが小説『Queer』を書いたのは、妻の死、そして元軍人のルイス・マーカー(小説では、ユージーン・アラートンという名前になっており、バロウズの研究者たちは、彼がバロウズの最愛の人であったと考えていた)に無惨に拒絶されたことを、自分なりに整理するためだったと理解するようになったという。小説を何度も読み返す中で、薬物依存と傷心に苛まれながらも、主人公リーにはドライなユーモアのセンスや優しさが残っていたことも、グァダニーノ監督の心に強い印象を与えた。「バロウズには、彼が公に見せたイメージとは、もっと違う姿があったんだ。僕とカリツケスは、リーとユージーンの絆の中に、素晴らしいラブストーリーを見出した。それは、スケールが大きく、普遍的に思えると同時に、とても感情的で、時には軽薄な感じさえする。バロウズの日記にあった言葉で、映画の台詞に使ったものもある。リーとユージーンが、物語のあちこちで言った、“僕は、クィアではない。心が体から分離しているんだ”。これこそが、主人公である恋人同士を結びつけたもので、2人が、社会的にも性的にもゲイと自認することに対して抱いていた不安を表現している」と思いを語った。

 カリツケスは、『チャレンジャーズ』の制作終了後、2023年の早い時期に、脚本の執筆を終えた。そしてグァダニーノ監督はクレイグに資料と一緒に脚本を送った。グァダニーノ監督は、20年前にクレイグに会っており、以来彼と一緒にいつか一緒に仕事をしたいとずっと思っていたという。

 あわせて公開されたメイキング写真では、撮影中のクレイグやスターキー、グァダニーノ監督の姿が捉えられている。

■公開情報
『クィア/QUEER』
5月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
出演:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー
監督:ルカ・グァダニーノ
配給:ギャガ
原題:Queer/2024年/アメリカ・イタリア/カラー/ビスタ/5.1ch/137分/字幕翻訳:松浦美奈/R15+
©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l.

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