“交際ゼロ日婚”が現代人に響く理由とは? 『わた婚』好きに観てほしい『めおと日和』

『わた婚』好きに観てほしい『めおと日和』

 いわば、親や上司の意向で勝手に結婚相手が決められてしまう時代が背景となっている。顔も名前も知らない相手との結婚など、現代を生きる人々にとっては考えられないこと。今は恋愛結婚が主流で、基本的には自由に相手を決めることができる。近年、出会いの場として市民権を得たマッチングアプリでは、年齢、居住地、年収、身長、喫煙の有無、趣味・志向など、細かい条件で相手を絞ることも可能だ。

 世界80億人の中から限りなく理想の相手と出会い、結婚できる。それを幸せだと思う人もいれば、中にはしんどさを感じる人もいるのではないだろうか。特に自分は何もしなくても、周りが勝手にお膳立てしてくれて、結婚できた時代とは違い、今は結婚したいなら自ら行動を起こす必要がある。学校なり職場なりで一から好きな人を作り、相手と距離を縮め、告白し、付き合ってからもデートを重ねながらお互いを知り、将来が見えたらようやく結婚……と、かなり時間がかかる。婚活サービスでそれらの工程をすっ飛ばすこともできるが、理想の相手に選ばれるためには多少なりとも己を磨かなくちゃならないし、恋の駆け引きも必要だ。

 そんなこんなで疲れている現代人の心に、お見合いや縁談といったワードは魅惑的に響くのかもしれない。結婚から始まる恋に駆け引きなどは必要なく、ゆっくりとお互いを知り、急がずに距離を縮めていける。そういうのもありかもしれないと思える下地がある種、整っていたとも言える。

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 なおかつ、『わた婚』で視聴者から話題を集めていたのが、美世と清霞のウブなやりとりだ。美世は居場所のない家で息を潜めるように生きてきたため、恋愛経験はなく、一色しかない布団を見て顔を真っ赤にするような女の子。一方の清霞も美世と出会うまでは誰かを愛おしいと思ったことがなく、2人は初キスまでも時間がかかった。『めおと日和』のなつ美も恋愛経験もなく、男性への免疫がないという設定で、予告映像では「接吻」というワードに動揺する姿も映し出されている。瀧昌の方も恋愛に不慣れなようで、本作でも甘酸っぱい夫婦生活を存分に堪能できるだろう。

 一方で、「男性が前に出て、女性はその一歩後ろから支える」という構図は現代的な感覚にそぐわないように思える。その上、男性が亭主関白だったら反感を招きかねないが、『わた婚』の場合は清霞が美世を常に尊重するキャラクターだったのが今の女性にも受け入れられた理由なのではないだろうか。

 清霞は母親との関係やこれまでの婚約者候補の言動から女性が苦手で、当初は美世に対して冷たい態度を取っていた。だが、美世の汚れない心を知るにつれて惹かれていき、惜しみない愛を注ぐようになる。その中で自尊心の低い美世が、少しずつ自信を取り戻していく姿が尊く感じられる作品だ。瀧昌も一見無愛想で何を考えているかわからないが、女性への接し方が不慣れなだけで心根は優しいという清霞とどこか重なるキャラクター。屈強な軍人でありながら、恋愛に不器用というギャップに心を射抜かれる視聴者が続出しそうだ。

『波うららかに、めおと日和』©︎フジテレビ

 そんなトキメキと癒しの両方を得られる本作。着物や軍服といった衣装や、昭和初期を再現したセットなど時代劇ならではの要素も楽しみつつ、なつ美と瀧昌のピュアな恋愛模様を追っていこう。そしてもしハマったら、共通点の多い『わた婚』もチェックすることをおすすめしたい。

『波うららかに、めおと日和』の画像

波うららかに、めおと日和

西香はちによる同名コミックを原作としたハートフル・昭和新婚ラブコメ。昭和11年を舞台に交際ゼロ日婚からスタートする、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を丁寧に描く。

■放送情報
『波うららかに、めおと日和』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:芳根京子、本田響矢、山本舞香、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見ほか
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:BE:FIRST「夢中」
プロデュース:宋ハナ
演出:平野眞
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/meotobiyori/
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