『名探偵コナン 隻眼の残像』とにかく小五郎がカッコいい “刑事ドラマ”の魅力溢れる傑作に

『隻眼の残像』は刑事ものとして傑作

 刑事ドラマであり警察ドラマとしての『名探偵コナン』の面白さ。そこに、司法取引制度が導入された改正刑事訴訟法の是非を問うような背景を絡め、罪を憎むが人も憎むべきか否かといった法治国家に生きる法の番人たちの心情も入れ込んで、観客にもどう考えたら良いのかを問いかける。コナンが地を走り空を飛んですべてを解決するスペクタクルがもたすカタルシスとは違った、正義とは、社会とはを問いかけるシリアスな感慨を抱かせてくれる映画だ。

 一筋縄ではいかないところがあるだけに、どこかモヤモヤ感も残るが、それをズドンと晴らしてくのが小五郎の圧巻のカッコよさで、だからこそ真っ先にアクスタを買い求めたくなるというわけだ。声でも、小山力也が演じた小五郎のシリアスぶりが心に刺さる。

 声については、速水奨の超絶イケボで紡がれることもあって、高明の中国故事成語がどれも説得力抜群だ。パンフレットに詳細が解説されているから、読んで覚えて使ってみたいところだが、自分の声が速水でないことだけは諦めよう。その高明の口から、弟で警察学校では安室と同期だった弟・景光の名前が呟かれたことが、何か今後の展開に意味を持ってくるかもしれない。映画の次回作なり、今後のTVシリーズの展開が気になるところだ。

 前作の舞台は函館だったが、今作は長野県にある国立天文台野辺山宇宙観測所がメイン。いくつもの巨大なパラボラアンテナが空に向けられている野辺山の光景は、実際に見るととてつもなく壮観だろう。映画ではその野辺山で、小さくなっても頭脳は同じ天才科学者の灰原哀が活躍して、観測装置の意外な使い道を見せてくれる。とはいえ本来は遠い宇宙の深淵を探る装置群。その野辺山が予算の削減で維持に課題を抱えているという話を、映画を観た人が少しでも感じたとしたら、舞台にした意義もあったというものだろう。

■公開情報
劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』
全国東宝系にて公開中
キャスト:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、高田裕司、速水奨、小清水亜美ほか
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:重原克也
脚本:櫻井武晴
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:http://www.conan-movie.jp

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