“自然災害”はドラマ・映画でどう描かれてきた? 『119』が可視化した助けを求める”声”

 3月31日に最終回を迎える月9ドラマ『119 エマージェンシーコール』(フジテレビ系)。主人公の雪(清野菜名)含む横浜市消防局司令課3係のチームは、予想外の障害や緊急事態を幾度となく経験し、結束力を高めてきたが、再び怒涛の試練がのしかかった。

 第9話では、2度にわたる土砂崩れが発生し、兼下(瀬戸康史)の妻と息子の安否がわからなくなってしまった。係長の高千穂(中村ゆり)からは、仕事に戻るのは家族の安否を確認してからでいいと言われるが、兼下は今自分にできることをしようと、電話対応にあたっていた。

 地球上で、この“どうにもならない”自然災害は後を絶たない。それを防ごうと立ち向かっていく物語としては『ブルーモーメント』(フジテレビ系)が記憶に新しい。気象庁の晴原(山下智久)は天気の動きを予想し、今後起きるであろう土砂災害や積雪による事故などの対策を練る重要な役割を果たした。このドラマは、たとえ日常的に降る雨であろうと人の命を奪いかねないのだと警鐘を鳴らしてくれた。

『ブルーモーメント』が描く対自然災害の脅威 山下智久がSDMの“存在理由”に向き合う

いつの間にかぽかぽかと暖かい春から、じめじめとした梅雨になり、気がつけばあと2話となった『ブルーモーメント』。今まで吹雪による遭…

 一方で天気と違い、ピンポイントで予測することは難しい地震は、より“どうにもならない”災害だと言える。2011年3月に発生した東日本大震災から14年が経ち、地震発生時の原子力発電所を舞台にした『Fukushima 50』や、復興半ばの被災地の人々にも焦点を当て“生きること”を問うた『有り、触れた、未来』など、様々な映像作品でも取り上げられてきた中で、2025年1月には映画『サンセット・サンライズ』が公開された。震災から少しずつ未来に進み始めていたところにやってきた新型コロナウイルスのパンデミック。その脅威に対する絶望と回復への希望を描いている作品だ。天災と同じく疫病も“どうにもならない”突然現れる脅威。その恐ろしさと社会的な考え方の変化、そして必死に立ち向かう人間たちの姿が多面的に映し出されていた。

 その他、ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)やNHK連続テレビ小説『おむすび』でも、コロナ禍でどうにか頑張ろうとする人々が描かれた。数年経ってから映像化されることで、視聴者はどうしても忘れかけてしまっていた当時の気持ちを取り戻すことができている。『119 エマージェンシーコール』が土砂災害を扱った理由にも、きっとそのような意義があったのではないだろうか。

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 また、その“どうにもならないこと”が起きれば、最初に連絡しようと思うのはやはり119番だ。災害に遭って助けを求めたい時や急な病気で苦しんでいる時、一番に助けを求める場所だろう。実際に119番に電話を掛けたことがある人は少ないだろうし、急な出来事でパニックになってしまうこともある。『119 エマージェンシーコール』は、そんな時にまずどうするべきかという当たり前のことを改めて脳裏に刻み込んでくれている。

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