『デビルズ・ゲーム』は“入れ替わりあるある”を覆した傑作 ボディチェンジの真の意味とは

『デビルズ・ゲーム』殺人鬼が“4人”である意味

キャスティングによるボディチェンジ、主導権という意味でのボディチェンジ。様々な形のボディチェンジを内包する本作だが、その白眉と言えるのは「意味付け」のボディチェンジだろう。
冒頭、殺人鬼に致命傷を負わされた若手刑事スンヒョンはジェファンに「あいつらは……4人」と一味の人数を伝えるが、4人というのは決して殺人鬼だけを指す数ではないからだ。そう、「殺人鬼ジニョク」「刑事ジェファン」「ジニョクの身体と入れ替わったジェファン」「ジェファンの身体と入れ替わったジニョク」はある意味で全員が全くの別人……4人の人間と言っても差し支えない。この数字の一致は偶然ではない。
ジニョクとジェファンは本来、2人の人間でしかない。けれどボディチェンジした彼らは精神がどうであれ既にかつてと同じ人間ではなく、「4人」の存在は周囲の人間を大きく惑わせる。その惑いから刑事が犯罪者を支援したり、逆に仲間だったはずの犯罪者たちが互いを裏切る本作の展開は、流血沙汰になる前から既に「殺人」的だ。入れ替わったジニョクとジェファンの「4人」は、存在そのものが人をバラバラに切り裂いていく殺人鬼集団と言えるだろう。デビルズ・ゲームとは、互いを出し抜こうとする2人が惨劇をもたらす悪魔の競争なのだ。

そして、ここでは詳細は伏せるが、本作は当初提示される状況そのままに進行する作品ではない。ジニョクにもジェファンにも物語上隠された秘密や仕掛けがあり、それは私たちにとって彼らの身体がさらにもう一度入れ替わるも同然の衝撃的なものだ。すなわち秘密が明かされる度に彼らの「人数」は増えていくのであり、物語のシチュエーション成立時点で2人4役だったジニョクとジェファンは、最終的には1人4役×2にまで増殖する。「殺人鬼どもは4人組」の遺言は回り回って「4つの顔を持った奴らこそ殺人鬼」なのだと暗示する予言へ入れ替わっており、そこに観る者を残虐描写以上に戦慄させる本作最大の恐怖がある。
アクションスリラーというジャンルにふさわしく、『デビルズ・ゲーム』は1度観るだけでも刺激的で決して退屈しない作品だ。けれど、ボディチェンジアクションスリラーとしての本作を味わいたいなら2度の鑑賞をおすすめしたい。ジニョクとジェファンのやりとりへの印象が大きく異なる2度目の鑑賞は、それこそ私たち自身の身体が入れ替わってしまったような不思議な感覚に陥ること間違いなしだ。
本作はボディチェンジを取り扱った映画だが、入れ替わるのは主役2人だけではない。キャスティング、作劇、視聴者全てに入れ替わりを起こす、世にも奇妙な視聴体験が『デビルズ・ゲーム』なのである。
■公開情報
『デビルズ・ゲーム』
全国公開中
監督・脚本:キム・ジェフン
出演:チャン・ドンユン、オ・デファン、チェ・グィファ、チャン・ジェホ
提供:KADOKAWA Kプラス、MOVIE WALKER PRESS KOREA
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
2023年/韓国/韓国語/106分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/英題:Devils/字幕翻訳:根本理恵/R15+
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