山田杏奈の“成長”が圧倒的な魅力に 『リラの花咲くけものみち』が描いた命のバトンタッチ

ドラマ『リラの花咲くけものみち』は、真っ直ぐに獣医学を学ぶ聡里の夢と志を描いた。第3話終盤で「私、大動物の獣医師になる」と決めたことを残雪に電話で話す彼女はその後「スッキリした。鳥になった気分」と言った。それは、一馬(佐藤寛太)への淡い恋心が失恋に終わった第2話終盤における彼女の「鳥になりたい、羽がほしい」という言葉に対応する。それは「鳥の羽の模様には意味があって、互いに同種かどうかを見分ける目印になるんだ。空を飛びながら、自分と同じ模様を本能で探す」という残雪の解説による「鳥のパートナーの見つけ方」を受けて聡里が言う言葉だった。一馬への恋心そのものが、彼女に打診された「ナナカマド動物病院」のアルバイトを「誰にも譲りたくない」という思いから始まっているように、彼女の恋は彼女が夢中になる夢の延長線上にあったものに過ぎず、鳥のように本能のまま、彼女は「大動物の獣医師になる」という自分の本当にやりたいと思うことを見つけ、自分で選んだ自由な道を「一生懸命歩いていく」姿で本作は終わる。

そんな、ひたすらに眩しい一本道が、「リラの花咲くけものみち」だ。初夏にはリラの花も咲き誇る、「あなたを待っています」という花言葉を持つ白樺の並木道で「ただいま、おかえり」と呼びかけ合う聡里と残雪の姿は、2人のその先の未来を予感させるとともに、かつて彼女にその言葉を投げかけてきた人、つまりはチドリの面影を感じさせるものである。つまりはそこに彼女を取り巻く過去現在未来がある。生命は、思いは、どこまでも続いていく。
■放送・配信情報
土曜ドラマ『リラの花咲くけものみち』
NHK総合にて、2月18日(火)24:35〜25:26(最終話再放送)
NHK+、NHKオンデマンドにて配信中
出演:山田杏奈、當真あみ、萩原利久、佐藤寛太、山崎静代、甲本雅裕、石橋静河、風吹ジュン
原作:藤岡陽子
脚本:水橋文美江
音楽:平井真美子
制作統括:黒沢淳(テレパック)、尾崎裕和(NHK)、勝田夏子(NHK)
プロデューサー:室谷拡、三本千晶(テレパック)
演出:谷口正晃
写真提供=NHK






















