『秘密』一人二役の中島裕翔が後輩“青木”を完コピ 現実と狂気の狭間でもたらす希望

『秘密』一人二役の中島裕翔が青木を完コピ

 死んだ後も他人を操って犯行を企てる。それこそがまさに貝沼の狙いだった。進行性で記憶が失われる疾患を貝沼は患っており、死ぬことで自身の記憶を後世に残した。鈴木は薪が見ることを危惧して、貝沼の脳とデータを破壊した。貝沼のビジョンを知るすべは失われたと思われたが、ただ一つ鈴木の脳を介して、間接的に貝沼の脳内を見ることができた。

 鏡の中の自身と薪に向かって語る國村隼の演技は、怪演と呼ぶにふさわしい。冷静に落ち着き払い、穏やかな表情で口走る一言一句は完全に一線を越えていて、背筋が冷たくなった。狂気にもいろいろあるが、もっとも恐ろしいのはゆがんだ愛情だと思う。貝沼が抱く愛情はまっすぐですみきっており、殺人衝動と結びついておぞましさを倍増させた。

 貝沼というモンスターを生んだ原因が自分にあると知った薪の苦悩は深い。薪自身、狂気と現実の狭間でもがいている。薪が鈴木の死を引きずっていることは明白で、鈴木と似た青木に死んでほしくないと思っていることは、ヘリでの行動からも伝わってきた。けれども青木は大丈夫だった。鈴木の思念に取りつかれた青木だったが、ギリギリのところで自分を取り戻した。

 青木は鈴木ではない。薪が言う「見たものや聞いたものをそのまま信じ、受け止めるような単純な人間」の青木は、単純であるがゆえに現実を見すえる強さを持っていた。自分は鈴木とは違う。それでも、いやだからこそ薪を助けることができると青木は悟ったはずだ。青木が操縦桿を握っていれば、薪は過去を乗り越えていける。絶望のなかに希望を見いだすエピソードだった。

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秘密~THE TOP SECRET~

人気漫画『秘密-トップ・シークレット-』を実写ドラマ化するヒューマンサスペンス。科学警察研究所の法医第九研究室、通称“第九”を舞台に、室長の薪剛と新米捜査員の青木一行のバディが、解決不可能とされていた事件の真相を解き明かしていく。

■放送情報
『秘密~THE TOP SECRET~』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~22:54放送
出演:板垣李光人、中島裕翔、門脇麦、高橋努、鳴海唯、利重剛、眞島秀和、國村隼ほか
原作:清水玲子『秘密-トップ・シークレット-』『秘密 season0』(白泉社『メロディ』連載)
脚本:佐藤嗣麻子
演出:松本佳奈、宝来忠昭、根本和政、稲留武
プロデューサー:豊福陽子、近藤匡、近藤多聞
音楽:小島裕規“Yaffle”
主題歌:「Iris」BUDDiiS(SDR inc.)
制作協力:C&Iエンタテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/top-secret/
公式X(旧Twitter):https://x.com/himitsu_ktv
公式Instagram:https://www.instagram.com/himitsu_ktv/
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