渡辺直美&池畑慎之介、“世界”の2人が『おむすび』に与えたもの 結が不在の奇妙な味わい

朝ドラことNHK連続テレビ小説『おむすび』第16週「笑え、ギャルズ」は、結(橋本環奈)が管理栄養士を目指して育児と勉強を両立させ多忙なため、姉の歩(仲里依紗)や商店街の人たちのエピソードを描く週。結は自分の生きる道を見つけ、それに向かって邁進している一方で、歩は年上にもかかわらず、心が定まらずにいる。古着のバイヤーとして立派に活躍しているように見えるが、内面に悩みを抱えているようで、それが東日本大震災をきっかけに表面化してくる。
阪神・淡路大震災で親友を失ったことが歩のなかで消えない傷となっているようだ。東日本大震災が起こったとき、被災した方々に何かできないか考えたすえ、衣類や生活雑貨を送ってはみたものの、震災から1年経過しても、かつてのギャル仲間アキピー(渡辺直美)がいまだに仮設住宅生活を余儀なくされていると知ると、心が塞いでしまう。

翔也(佐野勇斗)を励ましたときのように、「いまこの瞬間を楽しめ」とか、「つらいときこそ、好きなことをやって笑おう」とかいうようなことは言えないと、いままでの自分を否定しはじめた歩を励まそうと、チャンミカ(松井玲奈)が合コンを企画。目下、チャンミカが夢中になっている“たーくん”とその仲間3人と、歩、チャンミカ、ルーリー(みりちゃむ)の3人で合コンが行われた。が、三田村というデザイナー(自称)の言動が怪しく、歩は警戒心をむき出しにする。チャンミカは盲目的なまでにたーくんに恋しているので、怒って喧嘩になってしまった。でも結局、歩の勘が合っていて、チャンミカの店が泥棒に入られ、それはどうやらたーくんたちの仕業らしいことがわかる。
そんなとき、東北からアキピーがやって来る。彼女は不自由な生活を強いられてはいるが、とても明るく、不自由を自分のアイデアで乗り越えていた。そして、やっぱりギャルファッションが彼女とその娘カナの支えになっていることを知った歩は、ギャルとしての自信を取り戻す。

渡辺直美の元気さが画面を満たし、場面が活性化し、世界的に注目されるパフォーマーの実力を痛感した。「(つらいことを)笑って乗り越えてやるわ」というセリフがひじょうに力強く感じられる渡辺直美のアキピーだからこそ、歩も「それでも私は笑おうと思う」と決意できるのだと思う。
「つらいとき、おいしいものを食べたら少しは忘れられる」が結の座右の銘になっているが、歩の場合は「つらいときこそ笑う」。『おむすび』はおいしいもの推しであるだけでなく、笑い推しでもあるということだ。それも、おしゃれして好きなことして笑うということである。結がギャルというよりおいしいものや栄養担当になって、歩がおしゃれやギャル担当に二分化されてきた気がする。