『S区の奇妙な人々』は“沼落ち確定”の必見作! 最強コント師が仕掛けるドラマの新境地

お笑いをこよなく愛する人、お笑いと共に人生を歩んできた人、2025年も引き続きお笑いに溢れた生活をしたい人……そんなすべてのお笑いファンにおすすめしたい。いや、ゴリ押ししたいコント番組『S区の奇妙な人々』が、1月15日よりDMM TVで配信される。今回は、一足先に全6話を視聴した筆者が、その魅力を綴っていこう。
ジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)、シソンヌ(じろう、長谷川忍)、男性ブランコ(浦井のりひろ、平井まさあき)、空気階段(水川かたまり、鈴木もぐら)が出演、上田誠(ヨーロッパ企画)が脚本を手がける本番組。剛力彩芽、白洲迅、守屋茜ら豪華俳優陣が出演するサスペンスタッチのドラマパートと、単独ライブを打てば即完する今最も“コントを見たい芸人”4組が出演するコントパートがリンクしたとき、新たな物語の扉が開かれる――。

……と、ここまで仰々しく紹介したが、『S区の奇妙な人々』は、言うなれば、ジャルジャル、シソンヌ、男性ブランコ、空気階段のネタを、ライブでは味わえない“シチュエーション”と、こだわりぬいた“映像”で楽しめる新感覚の「超贅沢コント番組」である。謎の町「S区」に住む奇妙な人々たちを演じる4組の魅力がこれでもかというほど詰まっているし、コンビでのコントが多いので、各組の新境地を拝めるのも最高。
中には「ドラマパートがあることで、笑いの要素が少ないのでは?」と懸念する人もいるだろうが、それぞれがひとつの映像コントとして成立しているのでご安心を(コント監修にシソンヌ・じろうの名前があるのも心強い!)。もちろん、続きが気になるドラマパートも必見で、上田が描く物語と新作コント24本がグラデーションのようにつながるため「1話たりとも見逃したくない!」と、どんどんのめりこんでしまうだろう。
映像コント×芸人の親和性の高さ

そんな『S区の奇妙な人々』の特筆すべき点は、映像コントと芸人たちとの親和性が高すぎるところにある。
海外公演や動画コントの毎日投稿など、独自の路線を爆走するジャルジャルは、彼らの代名詞ともなっている「〇〇な奴」風味を感じるコントが目白押し。中でもコント「ダンスサークルの人」(第5話)はジャルジャルファンとしては、たまらない1本だった。怪しいサングラスの男(後藤淳平)が、大学1年生(福徳秀介)に声をかける。あることで慌てふためく福徳のリアクション、彼を操る後藤のキャラクターについ夢中になってしまった。このほか、バイトと店長が登場するコント「オシャレすぎる人」(第2話)や、タクシー運転手と乗客とのやりとりが楽しめる「正直な人」(第4話)など、「なぜ2人が会話をするだけでこんなにも面白いのだろう?」と思う瞬間が何度も訪れた。

毎年単独ライブを開催し、バラエティーでの活躍はもちろん、その演技力の高さからドラマや映画にも引っ張りだこのシソンヌ。彼らが演じる「S区の人」は「これこれ! こういうのを待っていたんだよ!」と言いたくなるほど、シソンヌ色が濃いキャラクターばかりだった。「隣のおばさん」(第1話)は、ワケありの男(長谷川忍)がアパートにいると、隣から女性(じろう)の怒鳴り声が聞こえてくる。様子を見に行くと……というコントで、空間にそっと置くような長谷川のキレのあるワードと、じろう演じるおばさんの狂気性にハマってしまい、何度も観てしまった。あのおばさん、そばにいたら絶対嫌なのに、愛おしく感じるのはなぜなのだろう。

続いて紹介したいのは、各賞レースでインパクトを残し続ける男性ブランコのコント。斬新なアイデアで、彼らしか踏み込めない領域にいつも連れて行ってくれる2人が、「S区」でも新たな世界へと誘ってくれた。一心不乱に壁に絵を描く男(平井まさあき)と、それを注意する職員(浦井のりひろ)の「壁画を描く人」(第1話)、朝、目が覚めると“とんでもない姿”になっていた男(浦井のりひろ)とその友人(平井まさあき)が登場する「最悪な人」(第3話)など、面白い小説を読んだあとの「良い読後感」と似たものを得られるコントが多かった。

メンバーで一番後輩ながら、髄所で存在感を示していたのは空気階段だ。彼らがテレビで披露するコントや、話題となるコントは、どこかインパクトのあるキャラクターコントが多い印象がある。本作ではそんな“キャラクターを立たせた”コントはもちろん、単独ライブでも見られる繊細な演技も披露してくれた。「記憶を預ける人」(第6話)は、まさにそれが融合したコントである。グッとくるやりとりもあるのに、やはり空気階段の世界に笑わされてしまった。