『照明店の客人たち』細かな伏線は韓国ドラマ屈指? ホラー×ミステリーの圧倒的見応え

『照明店の客人たち』伏線は韓国ドラマ屈指?

 また、日本では“ヒューマンミステリー”と紹介されることが多いようだが、本作は“ホラー”の部分も大きな魅力である。本稿を書くにあたり、関係するインタビュー記事をいろいろ読んだが、監督も原作者もホラーについて何度も言及している。

 特にキム・ヒウォン監督は、ホラーとして盛り上げるために光と音にこだわったようだ。たびたび登場する暗い路地は、照明店がある方向から光が差し込むよう照明を設置したという。その美しい光と影のコントラストが、恐怖感をさらに掻き立てる。また、ベンチをカツカツと爪で叩く音、部屋の中に誰かがいるのを感じさせる小さな物音など、ホラージャンルに欠かせない神経に障るような音も効果的に使われている。

 キム・ヒウォン監督のそうしたこだわりは、ドラマ全般に渡っていて、ホラー以外のシーンも思わずくぎ付けになる場面が多い。最も印象的なのは、物語が切り替わる第4話目の病院のシーン。ベッドに横たわる患者を上から映しながら、そのシーンから受け取る内容とは正反対の爽やかな楽曲がバックに流れる。若くして命を絶った韓国の伝説のシンガーソングライターであるキム・グァンソクの「風が吹くところ」という楽曲で、原作でも使われているという。歌詞が本作の内容にぴったりなのだとか。また、バス事故のシーンも見逃せない。交通事故シーンは韓国ドラマの十八番だが、光と影、そしてスローモーションをうまく利用し、これまでにない名場面を作り出した。

 こうしたこのドラマの特性を考え合わせると、キム・ヒウォン監督もインタビューで語っていたが、本作はスマホの画面よりテレビなどの大きな画面で観るほうが適しているように思う。序盤から細かな伏線も張られている。大きな画面なら、それも見逃さずに済むかもしれない。夜の雨のシーンが多いので部屋を暗くして観れば、さらに臨場感が高まるだろう。

 初演出作は力作であることが多いが、熱い想いがつまって成功する場合と熱い思いが絡まって失敗する場合がある。はたして、『照明店の客人たち』はどうか。『ムービング』ではヒーローものながら感動の人間ドラマを描き出したカン・フルによると、最終回のラストは「パンチの効いたシーン」が用意されているという。どんな結末を迎えるのか心待ちにしたい。

参照
※ http://m.cine21.com/news/view/?mag_id=106554

■配信情報
『照明店の客人たち』
ディズニープラス スターにて独占配信中
出演:チュ・ジフン、パク・ボヨン、ペ・ソンウ、オム・テグ、イ・ジョンウン
監督:キム・ヒウォン
脚本:カン・フル
©2024 Disney and its related entities

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる