柄本佑、『光る君へ』最終回にふさわしい圧巻の演技 変化し続けたまひろと道長の関係性
最終回では、まひろと言葉を交わすうちに、病床に伏していた道長の目にほんの少しではあるが力が宿る。まひろが「道長様は生きて、私の物語を世に広めてくださいませ」と言った時、「お前はいつも俺に厳しいな」と微笑む道長はとても幸せそうで、再び生きる希望を見出したように見えた。それでもいつか人の命は尽きる。まひろの物語に耳を傾ける道長の表情が徐々に虚ろになっていく様は見ていてつらい。物語を語ることで道長を懸命にこの世につなぎ止めようとするまひろの前で、道長が「生きることは……もうよい……」と口にする場面はあまりにも悲しかった。まひろが「続きはまた明日」と言うと、道長はゆっくりと目を開ける。まひろはほっとしたように微笑んでいたが、道長の目に涙が滲んでいたのが印象的だった。まひろを思う気持ちが失われたわけではないはずだ。けれど、まひろの物語を聞いていたい、まひろとともに生きたいという願いだけでなく、「生きることはもうよい」という思いも本心だと解釈した。その晩、道長はその生涯を閉じる。
柄本はインタビューにて、最後の場面におけるまひろと道長の関係を「母と子みたいな雰囲気」と語った。ソウルメイトから仕事仲間へ、編集と作家のような関係から、最後は母と子のような感じになり、2人の関係がいろんな形に変容していったと言う。関係性が変わっていく様を感じながら、まひろを大切に思う気持ちを一貫し続けた柄本の演技があってこそ、最後の場面はまひろと道長の深い信頼関係がうかがえる感慨深いものになったと思う。最終回にふさわしい圧巻の演技だった。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK