柳楽優弥、『ライオンの隠れ家』は纏うオーラまで違う 『ガンニバル』とのギャップに衝撃
最終話に向けて佳境を迎えている『ライオンの隠れ家』(TBS系)。感情をじんわりと心を揺さぶってくる温かい物語と並行して起こるサスペンス、そしてそれを牽引する柳楽優弥の演技の吸引力から目が離せない。柳楽に対して、筆者がこれまで抱いていたイメージをいい意味で大きく覆された作品でもある。
本作は、柳楽演じる市役所で働く平凡で真面目な優しい青年・小森洸人と坂東龍汰演じる自閉スペクトラム症の美路人の兄弟が、突然現れた「ライオン」と名乗る謎の男の子との出会いをきっかけに、ある事件へと巻き込まれていくヒューマンサスペンス。サスペンス的展開はもちろんあるのだが、家族愛や兄弟愛といった、日常にふと存在しているものの、誰もが素通りしてしまう絆をじっくりと丁寧に描いている。柳楽が演じている洸人は、市役所を退勤後に弟を迎えに行く心優しい人物であり、とりわけ絶叫するわけでも、アクションシーンがあるわけでもない。どこにでもいる優しい兄にすぎないのだ。
と、あえてこう書いたのは、これまで柳楽が演じてきた人物は“普通”ではなかったから。普通というものはどの立ち位置から見るか、どの価値観からから見るかによっても大きく揺らぐものではあるが、きっと大抵の人が見てきた過去の作品での柳楽は、アブノーマルな役が多かったのではないだろうか。
遡れば、史上最年少のカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した『誰も知らない』での鮮烈デビューが忘れられない。育児放棄の実話を基に制作された同作で、柳楽はあたかも日常に溶け込むようなリアリティを生み出していた。その狂気とも言えるリアルな質感は只者ではないと思わせる演技だった。