『ライオンの隠れ家』洸人と美路人の心を表す秀逸なラストシーン 向井理の異質なオーラも

『ライオンの隠れ家』心を表すラストシーン

 愛生(尾野真千子)と愁人(佐藤大空)が出発する日、買い物に出た洸人(柳楽優弥)と美路人(坂東龍汰)が戻ってくると、別荘の室内は荒らされており、2人の姿はなかった。お別れもできないままいなくなったことに困惑する美路人を落ち着かせ、洸人は柚留木(岡山天音)に助けを求める。

 12月6日に放送された『ライオンの隠れ家』(TBS系)第9話。あまりにも唐突に訪れた別れを受け入れながら、2人が無事に戻ってくることを信じて待つ洸人と美路人の“小森家”と、家族として最後の時間を過ごそうとする“橘家”。二つの家族の物語が展開していく。

 離婚の話し合いがしたいと愛生を呼び出した祥吾(向井理)。愁人がまだ小さかった頃に家族で行ったアスレチックに出かけたり、苦手だったピーマンを食べられるようになっていたり、夜中に自分のために麦茶を注いで持ってきてくれたり。そんな愁人の成長ぶりを目の当たりにした彼の表情には、後悔や反省をまったく感じないわけでもない。しかし、それらを抱いたところで誤った方向へと進んでしまうのが祥吾という人間なのであろう。

 離婚届を提出する直前、彼は突然「愁人は僕が育てる」と言い出し、愛生に対して親権を譲るなら離婚すると条件を突きつける。愛生の身になにかが起きたことを察知した柚留木と洸人は、山梨県の橘家へと向かう。祥吾のことを「家族に依存しなければ自分を保てない最低の人間」と柚留木が言い放つのは、序盤で回想シーンとして登場した彼の幼少時代のトラウマも関係しているのだろう。対して洸人は「誰でもそうなる危うさがある」と、自分自身と祥吾を重ねるのである。

 洸人が合鍵を使って橘家に侵入を試みたところに、外出しているはずの祥吾が現れるという橘家の玄関先での一連。先に挙げた祥吾の父親としての表情も、このドラマの肝となりうる車中での洸人の言葉もすべて覆すほどに、祥吾の放つ気味の悪いオーラは異質に映る。ここでひとつ気になったことがある。愛生は手を縛られてどこかに閉じ込められていたが、愁人は中盤以降姿を見せていないのである。無事であればいいのだけれど。

 ところで、今回のエピソードはとにかくラストシーンが秀逸であったことに触れておきたい。佐渡島から戻ってきて、愁人と突然離れてしまったことが受け入れきれずにいた美路人は、絵が描けなくなっていた。そんななか“1000人画廊”という、海岸沿いの堤防に観光のシンボルとして絵を描く依頼が舞い込むのだが、それもやりたくないと固辞する。橘家から帰ってきた洸人は、家にいるはずの美路人がいないことに気付く。そして、その海岸沿いの堤防で、ひとり座っている美路人を見つけるのだ。

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