『あのクズ』悟の思いを知った海里が出した答え 弱々しく歩く玉森裕太の背中が切なすぎる
しかし、きっと悟の中にも彼自身も認めたくない海里への愛着が湧いていたのだろう。もっともっと完膚なきままに海里を傷つけることは容易かったはずだが、悟はそうはしなかった。悟が本当に許せなかったのは、夢を見つけて渡米し、どんどん自分から離れていく、巣立っていく海里だったのではないだろうか。クズでどうしようもない頃の海里には居場所も知り合いも悟くらいしかなかったのに、どんどん世界を広げ、自分以外の社会との接点を持ち始めた海里の姿に、“寂しい”と思っている自身の本心を認めたくはなかったのではないだろうか。海里の側にいて、悟自身が最もわかっていたはずだ。大地があれほどかわいがるくらいに海里が魅力的な人物であることも、もう十分すぎるほど傷つき、自分の何もかもを諦め切っている彼にこれ以上の罰など不要であることも。でもそうやって過去に縛られ後悔している海里の姿を近くで見続けることくらいしか、悟自身の生きるモチベーションがなかったのだろう。
自分がのうのうと生きているだけで知らないうちに最も近くにいた人を傷つけ、その人の苦悩にさえ気づかなかった自分に嫌気が差した海里は、すべてを清算するかのように家中を片付け始める。そんな彼の手を止めたのは、真っ向から自分の弱さに向かうトレーニング中のほこ美の一幕を撮った写真だった。誰よりも近くでその奮闘を見ていたい人がいるのに、自分のせいでその可能性を奪ってしまいかねない、邪魔な存在になりかねないなんて。弱々しく歩く海里の背中が切なすぎる。冒頭の会長の言葉は海里に届かず、「ほっこーなら大丈夫」と励ます言葉の節々に「隣に俺なんかがいなくても」というニュアンスが滲む。ほこ美と違って、逃げる道を選ぶ他ない自分なんかが隣にいない方がいいだろうという、彼の中での頑なな線引きが見える。
次回が最終話。ほこ美は恐怖に打ち勝ち再びリングに上がれるのだろうか。そして、海里はほこ美との約束を今度こそ果たせるのだろうか。
■放送情報
火曜ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:奈緒、玉森裕太、岡崎紗絵、小関裕太、倉悠貴、鳴海唯、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、晝田瑞希、渡部篤郎、斉藤由貴
脚本:泉澤陽子、鹿目けい子
プロデュース:戸村光来、佐井大紀、宮﨑真佐子
演出:岡本伸吾、石井康晴、小牧桜
主題歌:PEOPLE 1「メリバ」
©TBS
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