綾瀬はるか、自身のモチベーションに繋がる“挑戦状”の存在 10~20代からの変化とは?

 『こちらあみ子』(2022年)で数多くの賞を受賞した森井勇佑監督の最新作『ルート29』が公開中。中尾太一の詩集『ルート 29、解放』からインスピレーションを受け、姫路と鳥取をつなぐ1本の国道29号線を1カ月近く実際に旅しながら、森井監督がオリジナル脚本を書き上げた。他人と交わろうとしないひとりぼっちの主人公・のり子役で主演を務めたのは綾瀬はるか。同い年だという森井監督とのエピソードや、『こちらあみ子』で強烈なインパクトを放った大沢一菜の印象など、撮影秘話をたっぷり語ってもらった。

「10代のころに経験したショートフィルムを思い出すような瞬間も」

ーー『ルート29』のオファーを受けたきっかけを教えてください。

綾瀬はるか(以下、綾瀬):「次にどういう作品をやりたいかな?」と考えていたときに、オファーをいただいて。今までとは違った系統の作品に挑戦するのも面白いなと思って、お受けすることにしました。あと、『はい、泳げません』(2022年)でご一緒したプロデューサーの孫家邦さんが、森井(勇佑)監督のことを、すごく褒めていらっしゃったんです。わたしも、森井監督の『こちらあみ子』が大好きだったので、「ご一緒したい!」と思いました。森井監督は同い年だということもあり、不思議な縁を感じています。

ーー撮影中、森井監督にはどのような言葉をかけられたのでしょうか?

綾瀬:「演じようとしないで、綾瀬さんがここに存在してくれればいい」と言われていました。台詞を言うときも、「もっと伝えようとしなくていいですよ」と。今までの経験を削ぎ取って、何もしないというのはまた違った難しさがありました。

ーー台詞を言うときって、どうしても考えてしまいそうですよね。

綾瀬:そうなんですよ。でも、だんだん「ひとりでお家のなかにいるときと同じなのかな?」みたいな感覚になっていって。そのときに出てきた感情に委ねようって思うようになりました。監督には、最後に「本当に何もしなかったですね。これは、めちゃくちゃ褒めてます」と声をかけてもらいました(笑)。

ーー優しい時間が流れる新たなロードムービーということもあり、アットホームな雰囲気もありますよね。

綾瀬:たしかに。「超大作!」という感じではなく、アットホームな雰囲気がいいなと思います。10代のころに経験したショートフィルムを思い出すような瞬間もあったりして。

ーーまさに初心に返るような感じだったんですね。

綾瀬:そうですね。これまでのキャリアで培ってきたものを一度壊して、むき卵になるみたいな経験でした。

ーーキャリアを壊すとなると、ある種の難しさもあったのではないでしょうか?

綾瀬:監督が、(大沢)一菜ちゃんに「台詞を言いたくなかったら、言わなくてもいいんだよ」と声をかけているのを聞いたとき、大事なのってそういうことだなと気付かされました。演じようとしなくていいというか。最初は、その塩梅がとてもむずかしかったんですけど、だんだんと理解できるようになっていって。全部を壊せたかと言われたらわからないけれど、「こんな感じかな?」というのは掴むことができました。

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