『ゴジラ-1.0』には山崎貴の“オタク的こだわり”が満載 次回作はヘドラ登場の構想も?

 11月1日に日本テレビ系『金曜ロードショー』で、『ゴジラ-1.0』が地上波初放送されます。

 『透明人間』『M3GAN/ミーガン』などで、ホラー映画界を牽引するブラムハウス・スタジオのCEOであるジェイソン・ブラム氏が来日した際、インタビューする機会に恵まれました。そのときブラム氏は『ゴジラ-1.0』を大絶賛していたのです。理由を聞くと、「家族の物語だからだ」と(※1)。そう、ブラムハウスのホラーは訳あり家族が怪事件に巻き込まれるというパターンが多い。ファミリードラマ×ホラーとでも言いますか。ブラム氏は、「ありえないような話を家族という入り口を使って観客に提供することで共感させることができる」と言っていました。

 『ゴジラ-1.0』はひょんなことから訳あり家族を持つことになった男が、ゴジラに立ち向かうストーリーです。本作におけるゴジラ×家族ドラマという建付けはブラムハウスの映画に相通じるものがあるというわけです。

 大ヒット作となり、アカデミー賞まで獲ってしまった『ゴジラ-1.0』。その魅力や面白さを挙げるときりがないですが、確かに家族ものという要素は本作のユニークポイントでもあります。恐らくこれは『シン・ゴジラ』との差別化を図る意味でも重要なアイデアだったのでしょう。山崎貴監督自身、ゴジラの新作を作らないかと打診された時、喜びながらも、あの『シン・ゴジラ』の後かと相当プレッシャーを感じたそうです(※2)。それだけ『シン・ゴジラ』はインパクトがあり、また怪獣映画としてもゴジラ映画としても傑作だったのでしょう。

 したがって、なにを作っても『シン・ゴジラ』と比較されてしまう。それなら思いっきり違う土俵に持っていったほうがいい。『シン・ゴジラ』が「現代の日本にゴジラが現れたら?」なら、今度のゴジラは思いっきり時代設定を変えてみよう。というわけで、戦後の日本が舞台。『シン・ゴジラ』が政治家や官僚たちがゴジラに直面するポリティカル・フィクション的な面白さを狙うなら、こっちはファミリードラマでいこう。『シン・ゴジラ』と『ゴジラ-1.0』は対になっていることがわかります。

 そして、『ゴジラ-1.0』はもう一つ差別化を図らなければならない相手がいました。2014年の『GODZILLA ゴジラ』から始まるハリウッド版ゴジラ、いわゆるモンスター・ヴァースのゴジラです。このハリウッド版は、ゴジラが邪悪な怪獣と戦うというのが基本パターンで、要はゴジラを最強ヒーロー的に描いています。それに対して、『ゴジラ-1.0』のゴジラは人類にとっての最恐ヴィランです。競合となるゴジラがすでに2匹もいたことが結果的に『ゴジラ-1.0』という傑作を世に生み出したのでしょう。そういう意味でとてもフレッシュなゴジラ映画ですが、ゴジラ愛の強い山崎貴監督なりの、歴代ゴジラ映画へのオマージュにあふれています。

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