常識を超えたバイオレンスアクション 『ギャング・オブ・ロンドン』が描く修羅の世界

『ギャング・オブ・ロンドン』は何が凄いのか

 エヴァンスに代わって、シーズン2のショーランナーと主要エピソードの監督を務めているのは、シーズン1でも最も多くのエピソードの監督を務めていたコリン・ハーディ。長編映画では『ザ・ハロウ/侵蝕』(2016年)、『死霊館のシスター』(2018年)などで知られる監督だが、現役最前線(エヴァンス同様まだ40代)の人気ホラー映画監督がここまで深くコミットしているということからも、『ギャング・オブ・ロンドン』が面白いだけでなくいかに凄惨な作品であるかが窺い知れるだろう。シーズン2でもエヴァンスは「クリエイター」と「エグゼクティブ・プロデューサー」として続投しているので、作品のスピリットも雰囲気もシーズン1からそのまま引き継がれている。

 人生において大事なことを大体戦争映画とギャング映画から学んできた自分にとって、『ギャング・オブ・ロンドン』が改めて教えてくれるのは、「敵の敵は味方」ではなく「敵の敵はやっぱり敵」であるということ。そして、どのキャラクターのことを指しているのかはシーズン1を見終わった人だけがわかるように書くが、当初は善なるものを志していたとしても、条件さえ揃えば人は容易に「悪に転んでしまう」ということ。よく「信じられるのは自分だけ」みたいなことを言う人がいるが、『ギャング・オブ・ロンドン』が描くのは「最も信じられないのは自分」という修羅の世界だ。

 そういう意味で、本作と最も近い作品を一つ挙げるのなら、深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズ(1973〜1974年)かもしれない。言うまでもなく、『仁義なき戦い』は当時の日本のスタジオシステムの中、たった2年間で5作品という今では信じられないペースで駆け抜けて、後世の映画に大きな影響を与えてきたシリーズだ。『ギャング・オブ・ロンドン』がその直接的な影響下にあるかどうかは定かではないが、少なくとも現在の映画界には、本作のようにその熱を維持しながら、10数時間以上にわたって作品世界やキャラクターたちを展開していくことができるような場所はない。そう考えると、コロナ禍の数年前、『ギャング・オブ・ロンドン』の映画化企画が立ち上がった際に、エヴァンスが最初から「映画ではなくテレビシリーズにしたい」と強く主張したことは先見の明としか言いようがない。

【予告編】「ギャング・オブ・ロンドン シーズン1」配信・放送スタート!【スターチャンネル】

■放送・配信情報
『ギャング・オブ・ロンドン』
【配信】スターチャンネルEXにて配信中(字幕版・吹替版)https://www.amazon.co.jp/channels/starch
【放送】BS10 スターチャンネルにて放送
(字幕版)11月18日(月)より毎週月曜23:00〜ほか
(吹替版)11月20日(水)より毎週水曜23:00〜ほか
※11月9日(土)23:30〜吹替版第1話先行無料放送
企画・脚本・監督:ギャレス・エヴァンス
企画・脚本・撮影:マット・フラナリー
監督:コリン・ハーディ、ザヴィエ・ジャン
出演:ジョー・コー、ショペ・ディリス、コルム・ミーニイ、ミシェル・フェアリー、ルシアン・ムサマティ、パーパ・エッシードゥほか
©GOL PRODUCTION LIMITED (2020). ALL RIGHTS RESERVED.
作品公式ページ:https://www.star-ch.jp/drama/gol/1/

『ギャング・オブ・ロンドン シーズン2』
【配信】スターチャンネルEXにて、11月25日(月)より毎週月曜1話ずつ更新(字幕版・吹替版)
【放送】BS10 スターチャンネルにて、2025年1月より独占日本初放送(字幕版・吹替版)
©GOL PRODUCTION LIMITED (2022). ALL RIGHTS RESERVED.
作品公式ページ:https://www.star-ch.jp/drama/gol/2/

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