ごっこ倶楽部 志村優&早坂架威とTikTok Japan担当者が語る、ショートドラマの未来と可能性

 縦型動画の存在感が大きくなっている。その中でも、近年急成長を遂げているのがショートドラマだ。1分~3分程度の長さで物語性のある作品を指し、国内外ですでに大きな市場に成長している。日本でも2023年ごろから流行が拡大しており、今後の成長が期待されている。

 そんな日本のショートドラマのトップランナーが、クリエイター集団のごっこ倶楽部(@gokko5club)だ。2021年に結成し「日常で忘れがちな小さな愛」をテーマに多数のショートドラマを投稿。TikTokで170万のフォロワーを抱えている。そんなごっこ倶楽部の統括プロデューサーである志村優と俳優兼監督の早坂架威、そしてTikTok Japan執行役員の佐藤友浩氏に、ショートドラマの可能性について話を聞いた。(杉本穂高)

縦型ショートドラマは次世代のアートフォームか?

――ショートドラマの流行について、TikTokではどのように分析されていますか?

佐藤友浩(以下、佐藤):TikTokはユーザー数も順調に成長し、今まさにハイクオリティなコンテンツが求められる段階になってきています。その中でショートドラマは「TikTok 上半期トレンド大賞2024」で大賞を受賞するなど、現在もそうですし、今後も継続して大きなトレンドの一つとなるのは間違いないと思います。ごっこ倶楽部さんにお聞きしたいんですけど、ショートドラマによってTikTokアカウントの再生数もフォロワー数も伸ばしていますが、2、3年前と比べるとどうですか?

早坂架威(以下、早坂):僕らが動画を投稿し始めたのが3年前なのですが、当時はショートドラマはほとんどありませんでした。あってもショートコントのような形式が多かったので、僕らの動画も珍しさでバズったんじゃないかと思います。ですが、この3年でショートドラマの投稿するアカウントも増加して、僕らも含めてクオリティも上がってきている実感はあります。

志村優(以下、志村):今、中国ではすでに8,000億円ぐらいの市場規模(※)になっていて、右肩上がりに拡大を続けています。日本でも、Webtoonの市場規模くらいには成長するだろうと考えています。むしろ、そこまで成長させなければ、この新しい領域で世界で戦えなくなってしまうんじゃないかと思っています。

ごっこ倶楽部 志村優

――志村さんは、「TikTok Creator Summit Japan 2024」で縦型のショートドラマを「次世代のアートフォームのつもりで作っている」と発言されていました。これは、従来の横の動画とは全く異なる表現媒体であるという意味でしょうか。

志村:そうですね。僕らが作っているショートドラマは、極めてインタラクティブなものです。インタラクティブな反応を設計するのは従来とは異なるスキルが要求される領域で、これまで横型の動画を作ってこられた方たちがなかなか馴染めないという話もよく聞きます。僕らは、お客さんがリアクションしてくれることを前提に作っていて、コメント欄の設計まで含めてコンテンツ作りと考えています。短さとかテンポの速さとかは、実は大きな差とは思っていなくて、このインタラクティブな設計が既存の映像作品との違いだと思います。

――既存の映像とは、視聴する環境や状況自体異なるわけですね。

志村:おっしゃる通りです。例えば、恋愛映画を観に行く時、恋愛映画だと思って観に行くじゃないですか。でも、TikTokの「おすすめフィード」ってどんな気分の時に何が出てくるかわからないんです。だから、どんな感情の時でも面白いと思えるものを作る必要があります。全く予期していない時に人を感動させるというのはかなり難しいことですが、ショートドラマはそこまで考えないといけない。

――実際、縦型のドラマでは、横型と比較して演出の文法みたいなものは異なるんですか?

早坂:シンプルにわかりやすいのは、縦だと狭い画角なので役者の動きが制限されてきますし、セリフのスピード感も違います。横型の現場で活躍されている方が僕らの現場にくると、一度やっぱり戸惑いが発生する場合が多いです。あと、横型動画の場合、カメラが激しく動くと観ている側が辛くなることがあると思うんですけど、縦だと割と観てられるんですよね。そういう意味では新しいカメラワークが生まれるかもしれないし、いろんな可能性を持っていると思います。

志村:横の画角だと表現できないものもあるはずなんです。このあいだTikTokで、一人称視点でまっすぐ前に向かっていくだけの動画がすごくバズっていたんです。ほかにも宇宙をどんどん奥に進んでいくみたいな動画があって1.2億再生されていました。これは「縦型動画によって、人に新しい欲求が生まれているのでは」と思ったんです。実はまだ発見されていない人間の生理的欲求があるのかもしれない、そういうものを積極的に見つけていきたいと思っています。

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