杉野遥亮は“令和のエンタメ界”を牽引する存在だ! 『オクラ』を支える絶妙なさじ加減
主演を務めた『直ちゃんは小学三年生』(2021年/テレビ東京系)で健気な“小学生”を愛らしく好演し、間髪を容れずに『東京怪奇酒』(2021年/テレビ東京系)でも主演。同じテレビ局の同じ枠で放送されるドラマで立て続けに座長を務めたものとあって、このあたりで彼に対する世間の評判や作り手たちの期待度が掴めるようになってきた。しかもこの年の夏からは映画『東京リベンジャーズ』シリーズがはじまった。令和のビッグプロジェクトにして、大人気シリーズだ。
ヤンキー映画である同作で杉野が演じているのは、物語の重要なカギを握る若手刑事・橘直人。『オクラ』の不破利己とはだいぶタイプが異なるが、彼もまた知的でクールな人物だ。劇中で展開するのは、大切なモノを守るため、その精神と肉体をぶつけ合う若者たちの姿。一つひとつの展開もアツいが、登場人物の誰も彼もがとにかくアツい。そんな中、杉野は作品全体を冷却するような役どころを担っていて、演技に関してもほかの俳優たちとは質感が少し違う。アクションに挑んでいるわけではないし、荒々しく声を張り上げたりすることもない。
ヤンキー役の者たちとの共演シーンが少ないとはいえ、橘直人ならではのリズムとペースによるパフォーマンスを維持し続けるのは容易ではなかっただろう。彼の演技のさじ加減によっては、作品全体のバランスが崩れてしまっていたかもしれないのだ。杉野の力量を思い知り、彼が同世代の俳優たちの中でも頭ひとつ抜けた存在なのだと認識したのはこのときだ。
そして、その実力を証明するように、大河ドラマ『どうする家康』(2023年/NHK総合)や『ばらかもん』(2023年/フジテレビ系)といった話題作への出演が続き、2024年の夏季クールに放送された『マウンテンドクター』(カンテレ・フジテレビ系)から『オクラ』まで、またしても主演ドラマが2クール連続で放送されているしだいである。
『オクラ』の第1話は、これから続いていくのであろう飛鷹と不破の関係性を示すのにとどまっていた印象だ。飛鷹はときに暴走しがちで、不破はそれを諌めなければならない。反町の“動的”な演技に対して、杉野は拮抗していかなければならないのだ。飛鷹と不破は真逆の性格なのだから、反町の勢いに一緒に乗ってしまってはまずい。演技のベクトルはそれぞれ違うものでなければならないわけだ。またしても杉野の全体を俯瞰する力と、演技のさじ加減が重要になってくるはずである。
■放送情報
『オクラ~迷宮入り事件捜査~』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~放送
出演:反町隆史、杉野遥亮、白石麻衣、前田旺志郎、有澤樟太郎、三浦獠太、青木さやか、橋本じゅん、宇梶剛士、平山祐介、中村俊介、観月ありさ
脚本:武藤将吾ほか
演出:柳沢凌介ほか
プロデュース:足立遼太朗
音楽:林ゆうき
主題歌:Kroi「Jewel」(IRORI Records/PONYCANYON INC.)
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
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