『おむすび』は平成中期の世相を映す 松平健が語る「この世にクズはいない」に涙

『おむすび』は“クズ”がキーフレーズに

 働きざかりの聖人たちがクズを否定することは、時代が平成中期であることと関係ありそうだ。長く続く不況で企業は生き残りをかけてリストラを断行し、多くの人が自分は価値がない存在だと思い知らされた。聖人も、クズになるまいと懸命にもがいてきたはずだ。そうした中で、永吉がふぞろいの野菜たちをクズではない、たった1円でも必要とする人はいると言い切った意味は大きい。

 クズに対する態度が、不在の姉・歩(仲里依紗)に対する評価と直結しているのも興味深い。永吉はギャル肯定派で、聖人はギャルに良い感情を抱いていない。ギャルの本懐が自分らしく生きることにあるとして、それを実践した歩に家族それぞれが相反する感情を抱いている。そのあたりの事情は聖人が床屋をやめた経緯を含めて描かれていくだろう。

 作品の背景と人物を提示する第1週では、主人公の友情と恋の萌芽もあった。書道部の風見、野球部の陽太(菅生新樹)、「鬼怒川の河童」翔也(佐野勇斗)は、憧れの先輩、幼なじみ、ダークホース枠ですでに期待を抱かせる。余談だが、流れるような口上で野菜を売り、美声を響かせる永吉はただの農家に見えない。超個性的な祖父の過去が気になるところだ。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、宮崎美子、松平健、佐野勇斗、菅生新樹、松本怜生、中村守里、みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、田村芽実ほか
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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