北村一輝が『地面師たち』とは正反対のキャラに 何通りも“美味しい”『おっちゃんキッチン』

『おっちゃんキッチン』は何通りも美味しい

 Netflix、Prime Video、ディズニープラス、ABEMA、Huluなど、動画配信サービス各社が提供するオリジナルコンテンツに世間の関心が集まっている。なかでも、ディズニープラスで2月から独占配信中のドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』は第76回エミー賞で史上最多の18部門を受賞する快挙を達成。Netflixで7月に配信された『地面師たち』も日本で大ブームを巻き起こし、あちこちで登場人物の印象的なセリフが漏れ聞こえる現象が起きている。

 そんな中、同作にも出演者の一人として名を連ねた北村一輝主演のTVerオリジナル番組『おっちゃんキッチン』が9月6日より配信開始となった。本作は、TVerとKDDIのコンテンツ共同制作プロジェクトの第1弾作品。横型動画がTVerで、縦型動画がTVer公式SNS(TikTok、YouTube Shorts、LINE VOOM、X)にてそれぞれ視点の異なるストーリーとして無料配信中だ。スマホで移動中や隙間時間にも視聴することを想定した全12話のライトなミニドラマだが、今後シリーズ化される可能性も秘めた後引く作品となっている。

 舞台は、北村演じる48歳のおっちゃん店主・学が営む、おまかせメニューのみの小さな食堂。そこに毎回悩みを抱えた若い女性客が訪れ、学は彼女たちの愚痴を聞きながら料理を作っていく。フォーマットこそグルメドラマだが、本作最大の見どころは食事シーンや調理シーンでもなければ、料理そのものでもない。女性客たちから発される切実さを帯びた若者の言葉だ。

 部下の気持ちが分からない上司との関係に疲弊する新入社員、連絡を返さない彼氏に苛立つキャバクラ嬢、過干渉な母親に頭を悩ませる見習いデザイナーなど、愚痴の内容は千差万別。女性役のゲストには、第3話までに『silent』(フジテレビ系)が手がける『いちばんすきな花』と『海のはじまり』で松下洸平と有村架純の後輩役を好演した杏花、NHK連続テレビ小説『虎に翼』でヒロイン・寅子(伊藤沙莉)が通っていた明律大学女子部法科の後輩を演じた福室莉音、中村英児監督の映画『Good Luck My Load』でヒロインを務めた井筒しまら若手実力派俳優が登場しており、配信前のインタビューで北村が「若い俳優さんもどんどん楽しんでやってほしいなと思います」と期待を覗かせていた通りに自由度の高い演技を見せている。(※)

北村一輝が大切に思う若者たちの言葉 『おっちゃんキッチン』で目指した“昔のテレビ”

民放公式テレビ配信サービス「TVer」のオリジナルドラマ『おっちゃんキッチン』が、9月6日より配信スタート。主演の北村一輝が撮影…

 彼女たちの演技にはそれぞれ個性があって面白いのだが、それをさらに魅力的に見せるのが北村の安定感抜群の芝居。学は料理の腕は一流で顔も男前だが、恐ろしいほどに無口なキャラクターだ。『地面師たち』で情報屋の竹下を演じる北村は小物感を溢れさせ、唐突に「ルイ・ヴィトン!」と叫んだり、薬物に溺れてナイフで人を滅多ざしにしたりと攻めまくりだが、今回は受けに徹している。豊かな表情とコミカルなリアクションでどんな芝居も受け止めてくれる北村の懐を借りて、ゲストたちも伸び伸びと演技を楽しめている印象を受けた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる