ニコール・キッドマン、ダコタ・ファニングら共演 『理想のふたり』が描く“人間たちの醜さ”

『理想のふたり』が描く“人間たちの醜さ”

 音楽映画『フローラとマックス』で見事なパフォーマンスを見せたことが記憶に新しい、ロックバンドU2のボノの娘としても知られる、俳優イヴ・ヒューソン。彼女とともに、ニコール・キッドマン、リーヴ・シュレイバー、ダコタ・ファニング、イザベル・アジャーニなどの豪華俳優陣が集結した、リミテッドシリーズ『理想のふたり』がリリースされ、話題となっている。

 日本で地上波放送される「2時間ドラマ」枠では、旅情ミステリーが根強い人気があるが、アガサ・クリスティ原作ミステリーや、『ナイブズ・アウト』シリーズ、Netflix配信の映画『マーダー・ミステリー』シリーズなど、観光気分と殺人事件の謎解きの面白さが味わえる、本作のような趣向のジャンルは、アメリカでも好評を博している。本シリーズ『理想のふたり』は、そこにNetflixで驚異的な視聴数を記録した『バード・ボックス』のスサンネ・ビア監督が携わることで、まさに「必勝の構え」が完成している。

 ここでは、そんな本シリーズの見どころや、ミステリーと恋愛模様を描くことでたどり着いたメッセージとは何なのかを考察していきたい。

 物語の舞台となるのは、アメリカの名作文学『白鯨』で有名な、アメリカ東海岸のナンタケット島だ。かつて捕鯨産業でその名を馳せた地は、いまでは国内の有力者や著名人が毎シーズンごとに大勢訪れる滞在地として知られ、「東のハリウッド」と呼ばれることもある、富裕層向けの観光地となっている。本シリーズで言及されるように、ハイシーズンにはホテルの宿泊予約を取ることは難しく、宿泊料も著しく高騰する。

 そんな、優雅なバカンスを過ごしたいアメリカ人にとっての憧れのナンタケット島を題材に、数々の小説を執筆しているのが、本シリーズ原作者でありベストセラー作家、エリン・ヒルダーブランドである。彼女は、毎年初夏にロマンス作品を出版し続けていることから、「夏の女王」という異名を持っている。それは彼女の小説が、夏のバカンスにビーチで読むのにちょうど良いというセールスポイントを有していて、その強みを彼女自身がブランディングに活かしながら売り上げを伸ばしていることに由来する。

 とくに、作中にナンタケット島の名所などが小説に多く登場するという点は、この島に憧れを持つ読者や、実際に島に観光に来た旅行者にとっては、喜ばしいものがある。実際に現地で読みながらバカンスを過ごせば、臨場感をたっぷり味わえることだろう。島の風物を具体的に描写できるのは、原作者エリン・ヒルダーブランド自身が島に住みながら執筆しているからでもある。

 本シリーズ『理想のふたり』も、やはりナンタケット島を舞台にした一作であり、ニコール・キッドマンが演じる裕福な作家グリアは、まさにエリン・ヒルダーブランドのような、島で小説を書いている人物である。そして、その夫タグ・ウェンブリー(リーヴ・シュレイバー)は、ナンタケット島で5代続いている有数の名家の跡取りであり、広い土地とビーチを目の前にした邸宅を所有している。

 そんな裕福な家の息子ベンジー(ビリー・ハウル)と結婚式を挙げるため、島を訪れたのが、本シリーズの物語の中心となるアメリア(イヴ・ヒューソン)というわけだ。しかし、彼女はこれまで経済的に恵まれた生活を送ってきておらず、価値観の違いからウェンブリー家の人々とはなかなか馴染めずにいた。とくに義母になるはずのグリアとは言い争いをするほどの険悪な仲に……。

 傷心のアメリアを励ましてくれるのが、親友のメリット(メーガン・フェイヒー)だ。式のためにナンタケットまで足を運んでくれた、最大の理解者である彼女の存在が、アメリアの心の支えだったが、ある日突然、予想もしなかった不幸に見舞われることとなる。アメリアは、親友が巻き込まれた事件の真相を突き止めるため、ウェンブリー家の闇の部分へと足を踏み入れていくのだった。

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