仲野太賀&岡田将生、『虎に翼』で2人の夫が繋いだバトン “ありのままを認める”象徴に
一方で、2人目の夫・星航一は「なるほど」と相手の考えを受け入れた上で、一線を引く考えを持ち、はじめは寅子と相容れない考えを持つ人物だった。これは、航一の総力戦研究所にいた過去、戦争を阻止できなかった後悔があったから。悲しみを抱えた状態で寅子と出会った航一は、寅子によって徐々に“変化していった”存在と言えるだろう。
寅子と航一は、互いの弱さを打ち明けあったことで互いに惹かれていき、納得のいく関係性を模索しながら、やがて事実婚をする。航一が子供たちと向き合ってこなかったが故の確執も、寅子との出会いで変化した航一だったからこそ解決することができた。航一は自身の感情の蓋をしないこと、相手の悲しみや苦悩にも寄り添うことを寅子から学んでいったのだ。
相手と自分の感情に向き合えるようになった航一は、寅子と暮らすなかで視野を広げ、一歩踏み込んだコミュニケーションができるようになっていく。大学院を辞めたいと打ち明けた優未(川床明日香)に対して退学を止めようとした航一だったが、後に朋一(井上祐貴)が裁判官を辞めたいと打ち明けたときには優しく肩を支えて朋一をねぎらった。また、尊属殺人重罰規定を最高裁で扱うかどうかについて「机上の理想論だ」と桂場(松山ケンイチ)に言われた際には、寅子を彷彿とさせる激昂した姿を見せた。子供が歩みたい未来を閉ざさずに寄り添うこと、感情を露わにしてでも人権蹂躙を許さないこと、これらも寅子から受けた影響の成果だろう。
真意の見えづらかった航一が、徐々に人間らしさを取り戻し、感情を発露させる様子はとても鮮やかで、航一に影響を与えるに至った寅子の成長も感じられた。感情の乏しい役柄も、人間らしく葛藤する役柄も得意な岡田将生が演じたからこそと言えるだろう。
優三が促した寅子の変化と成長は、寅子を介して航一へと繋がった。2人の夫は主人公のパートナーとして、“ありのままに生きることを認め合う”という作品の軸を表現するために、寅子を介してバトンを渡しあった存在なのだ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、石田ゆり子、岡部たかし、森田望智、上川周作、土居志央梨、平岩紙、戸塚純貴、高橋努、川島潤哉、塚地武雅、趙珉和、平埜生成、井上拓哉、三山凌輝、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、和田庵、尾碕真花、菊池和澄、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK