『マウンテンドクター』が描いた命の尊さ 杉野遥亮らチーム一丸となり医療ドラマに一石

『マウンテンドクター』が描いた命の尊さ

 登山アプリ「YAMAP」で本作のロケ地である唐松岳や霧ヶ峰、美ヶ原をめぐるマップがダウンロードできる企画など、本作は山好きからも注目を集めた。夏山シーズンにかけて放送された『マウンテンドクター』は、一貫して山での遭難リスクを伝えてきた。北アルプスをはじめとする山々の美しい光景に魅せられるかたわらで、滑落、道迷い、落石、土砂崩れ、高山病、疲労遭難、骨折、落雷、野生動物・昆虫による受傷など、想定されるさまざまなリスクを描写する本作によって救われた命、軽減された被害はあったはずだ。個々のエピソードを通じての啓発効果は高かったと考えられる。

 撮影機材を2千メートルを超える高所に運ぶだけでも大変なのに、足場の悪い地形で医療処置を行うなど、通常の医療ドラマの倍以上の労力がかかっていたことは容易に察せられる。また、春夏期の山間部は暑さや急変する天候に加えて、樹林帯でやぶ蚊やブユが大発生するという大変さもある。クランクアップ時のコメントで、出演者が口々に撮影の過酷さに言及していたが、本作の制作自体に山岳医療の難しさと重なる部分があり、そのことがドラマにある種のリアリティをもたらしたと考えられる。

 最終話で、歩の父・市朗(遠山俊也)の「この土地の人間はみんな北アルプスの山々に育てられたようなもの」という台詞があった。筆者も各地の山々を登ると、それらの山が地元の人から愛されていると実感することが多い。登山ブームで、遭難事故がニュースで報じられる頻度も増えた。長野県を舞台にした『マウンテンドクター』はローカルに根差しながらも、同時代性を持ったテーマを両立させることは可能であると伝えており、今後のドラマ制作に指針を示すものとなった。

■配信情報
『マウンテンドクター』
TVer、FOD、Netflixにて配信中
出演:杉野遥亮、岡崎紗絵、宮澤エマ、向井康二、八嶋智人、檀れい、大森南朋
脚本:高橋悠也
演出:国本雅広、高橋貴司、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡(カンテレ)、大城哲也(ジニアス)
音楽:林ゆうき
主題歌:Official髭男dism「Sharon」(IRORI Records/PONY CANYON INC.)
制作協力:ジニアス
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mountaindoctor/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/_mountaindoctor
公式Instagram:https://www.instagram.com/_mountaindoctor/
公式Tiktok:https://www.tiktok.com/@_mountaindoctor

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