『西園寺さんは家事をしない』になぜ視聴者は夢中になった? “自由で楽しい”家族の在り方

『西園寺さん』になぜ夢中になったのか

 火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)がついに終わってしまう。西園寺一妃(松本若菜)と、楠見俊直(松村北斗)と娘のルカ(倉田瑛茉)、さらにはカズト横井(津田健次郎)という、このちょっと変わった、心の優しい人々が「偽家族」として集う光景はなんでこんなに愛おしいのだろう。

 「呪怨」「盛塩」「恐山」など、登場人物の誰も深くは追及しないけれど、なぜか各話のキーワードのようになって、物語を盛り上げたりもするルカのマイブームに、大人たちが時に乗っかって一緒に遊んだり、スッと流したり、首を傾げながら面白そうに受け入れたりという不思議な光景に、気づいたら病みつきになっていた。もしかしたらそれが、「家族」の光景なのではないか。

 第10話において、互いの変なところ、ちょっと困ったところ、いいところを羅列しながら喧嘩する西園寺さんと楠見が、その「全部が好き」なのだと言い合って、互いにビックリする、なんとも素敵な告白の場面を見ながら思った。「家族」とは、偽家族を提案する第2話の西園寺さんが言うところの「互いに気を遣わずにいられる関係性」のことであり、互いのちょっと変なところもひっくるめて丸ごと受け入れてしまう人たちの集合体なのではないか。だから彼ら彼女らは皆、ちょっとずつ変な自分のまま、思い思いに好きなことをして過ごしている。

 一方で、どんなに思い合っていた家族でも、すれ違ってしまうこともある。「互いに気を遣わずにいられる関係性」と思っていたら、誰かにとってはそうではなかった。母一人が無理をして突然いなくなってしまった。自分たちの幸せは母の自己犠牲の下にあったのかもしれない。だから西園寺さんは「やりたくないことをやっている人をやらなくていいようにすることが私のやりたいこと」だと思っているし、「少し家族というものに対して臆病」になっている。西園寺さんの妹・琴音(村川絵梨)が言うように「家族は儚い」。だからちゃんと、思っていることは口に出して、話し合わなきゃならない。「(偽)家族会議」を繰り返す西園寺さんと楠見親子のように。

 本作は、『ホタルノヒカリ』のひうらさとるの同名コミック(講談社「BE・LOVE」連載)を原作に、宮本武史、山下すばるが脚本を手掛けた。仕事ができて、「心沸き立つ」ことに常に全力な西園寺さんを演じる松本若菜は、かわいくて美しいばかりでなく、コメディエンヌとしての魅力も存分に発揮し、彼女が着こなすファッションの数々の素敵さ含め、彼女にしかできないスーパーヒロイン・西園寺一妃を作り上げた。対するシングルファーザー・楠見俊直を演じる松村北斗は、ふとした心の揺れがあまりにもリアルで、その表情1つ1つに心動かされずにはいられなかった。

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