『スカイキャッスル』未久を突き落としたのは誰なのか? 田辺誠一の群を抜いた原作再現度
スカイキャッスルで人の血が流れ、またしても悲劇が繰り返された『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)第7話。
とにかく浅見家の崩壊に歯止めが効かない。山田未久(田牧そら)が自分の父親の正体は浅見瑠璃(新井美羽)の父親・英世(田辺誠一)だということを瑠璃に思わずバラしてしまう。そもそも、紗英(松下奈緒)が未久を居候として受け入れたのも受験コーディネーター・九条彩香(小雪)からの勧めだった。そして九条はこの事実を元々知っていた。
やはり担当する受験生の周囲のことを徹底的に調べ上げているようだ。当初、父親の正体を明かさない代わりに未久の要望を極力聞き入れるように折れていた紗英の姿に、その真意を知らない瑠璃は激怒し、ますます九条に傾倒していく。この状態を嘆く紗英に九条は「あなたも私のせいにするんですか?」と切り返し、亡くなった冴島香織(戸田菜穂)も全く同じ台詞を吐いていたようだ。
しかし、瑠璃も衝撃の事実の発覚続きで、なかなか受け止めきれないだろう。母親や母方の祖父の経歴詐称だけでなく、だからこそより心の拠り所にしていた優秀な医師である父親までもが自分たちを欺いていたことを知ってしまう。「誰を信じていいかわからない」というのは彼女の心からの悲痛の叫びだろう。彼女からすれば未久と自分を決定的に分け隔てるものが確かな父親の存在であり、彼の経歴だったわけだが、まさかのそれが未久と自分の共通点だなんて思ってもみなかっただろう。
未久も不遇の環境だとはいえ、やけに挑発的だ。そりゃあ、毎日“こうだったかもしれない自分”や“こうだったかもしれない生活”を瑠璃を通して見せつけられ、「本当は私が手にするはずのものだったのに」という感情を禁じを得ないのだろう。未久から瑠璃への当て付けのためにキスされた南沢青葉(坂元愛登)も気の毒ではあるが。そして、瑠璃からすればスカイキャッスルの自宅に上がり込み、母親のことも取り込みつつあり、父親とは実は血の繋がりがあり、妹にも懐かれ、自分が好意を寄せる青葉から一途に想われ、誕生日会では皆の中心にいて祝われて……となると、瑠璃は自分のものをどんどん未久に奪われていく感覚にも陥るだろう。
しかし、未久の母親(映美くらら)との思い出も一切記憶になく、その可能性に思い至ることも皆無の英世が、本人の予期せぬところでトラブルを巻き起こしまくるのも想像に易しい。本人は温和ながらも優柔不断で、強い意志があるわけでもなく皆にいい顔をするタイプに見える。その姿勢が時に非常に残酷に人を傷つける。原作である韓国ドラマ『SKYキャッスル』の各キャラクターの再現度合いでいくと、英世役の田辺誠一が群を抜いている。