山田涼介が体現した“令和の教師像” 『ビリオン×スクール』が現代に“共感”を生む理由

山田涼介が体現した“令和の教師像”

 ドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)がついに最終回を迎える。加賀美(山田涼介)と芹沢(木南晴夏)の奮闘もあり、ゼロ組の状況は大きく改善。加えて、加賀美と東堂(水野美紀)の過去も一応の決着がついたかと思われた矢先に、ティーチ(安達祐実)から加賀美の脳の一部がAIという衝撃の事実が明かされた。

 クライマックスに向けて盛り上がりを見せている中で、改めて整理したいのが山田涼介演じる加賀美の教師像だ。日本最大の財閥グループ企業「加賀美グループ」のCEOで、天才的な頭脳で革命的な開発をしてきた発明家という触れ込みの加賀美は、容姿端麗で頭も切れる、しかしクセ強な、これまでの学園ドラマではいなかった新しいタイプの教師である。

 第10話までに西谷(水沢林太郎)、梅野(上坂樹里)らゼロ組の生徒が加賀美の力を借りて自分自身の問題と向き合い成長してきた。だが、もっとも成長しているのは加賀美自身だ。

 私立絵都学園の「やる気ゼロ、才能ゼロ、将来性ゼロ」の生徒が集められた3年0組。最初は荒れに荒れていて、教師たちも手の施しようがないほどひどい状態だった。初めてクラスに赴任してきた時も「これから俺の配下となれた喜びを噛み締め、期待に報いる働きをしろ」と現実世界であれば問題が起きそうな発言で生徒を威圧して、すかさず芹沢がフォローを入れる場面もあった。

 最初は「生徒の気持ちが分からない教師」という印象だったのだが、生徒たち一人ひとりに向き合う加賀美の姿を見てその印象は変わった。第2話では東堂(大原梓)を筆頭に松下(倉沢杏菜)、城島(奥野壮)、紺野(松田元太)から執拗ないじめを受けていた梅野を助けようと面談を実施するが、梅野は逆恨みされたくないという理由からいじめの事実を認めようとしない。そこで加賀美はいじめの現場となっていた東堂らのアジトをビルごと破壊するという大胆な行動に打って出た。

 『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)でも鬼塚(反町隆史)が生徒の自宅の壁をハンマーで破壊するという名シーンがあるが、強引に生徒の“心の壁”をぶち壊すというそれに近しいものが『ビリオン×スクール』にもある。梅野に加賀美が語った「他の全てから逃げたとしても、決して自分からは逃げられない。だから、自分を傷つける自分であってはならないんだ。お前は何も悪くない。堂々と自分を守れ」という誰もが自分を一番大切にするべきというセリフは生徒への言葉であると同時に、自分への戒めのようにも見えた。加賀美のセリフは生徒を突き放すような辛辣な言葉も多いが、山田の抑揚の効いた温かみのあるセリフ回しからは生徒への信頼関係が伝わってくる。

 それは後に第9話で明らかになった“加賀美のいじめられていた過去”によって回収される。20年前に、東堂の生徒だった加賀美。いじめに遭っていた同級生の内巻を助けたことで、いじめの対象が内巻から加賀美へと移っていく。そこで加賀美は芹沢に小型カメラとICレコーダーを準備させて、いじめの様子を撮影し、担任の東堂にいじめを告発するが、東堂はデータの入ったUSBメモリーを奪おうとした拍子に加賀美は屋上から転落。そこで加賀美は記憶喪失となっていた。思い出すまで記憶を忘れていたとはいうものの、心の中では忘れられない記憶として刻まれていたのだろう。加賀美が生徒にまっすぐ向き合うのはそうした過去の苦い記憶が関係していた。

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