『降り積もれ孤独な死よ』は成田凌の足跡を刻む一作に 悲劇の連鎖止める確かな意志
『降り積もれ孤独な死よ』(読売テレビ・日本テレビ系)最終話の雨は、すべての悲しみを洗い流すようだった。
謎を解くカギは13年前の“あの日”にあった。灰川邸に陽子(長谷川京子)を呼んだ花音(吉川愛)の真意は、健流(杢代和人)の死の真相を伝えるため。13年前、灰川邸の地下室での会話。健流は花音に血のつながらない家族への不信感を吐き出す。灰川(小日向文世)には血のつながった子どもがいて、自分たちは代替品であると。それでもいいと灰川への信頼を語る花音に、健流は怒りをあらわにする。止めようとしたマヤ(仲万美)が背後からはさみで健流を刺した。
原因は健流自身にあったのか。灰川邸での降り積もる死の最初の一人こそ健流であり、不運も重なった死の責任を灰川は一身に背負おうとした。その場にいなかった悟(松本怜生)や蒼佑(萩原利久)にも知らせることなく。花音が所持していた灰川の日記の最後のページは健流が死んだ日である。灰川が7年前に家族を“解散”したのも、健流に代わって陽子に黄色いカーネーションを送り続けたのも、健流が生きているように見せるための偽装だった。
「家族とは何か」という問いは本作で繰り返されたテーマであり、灰川が作った疑似家族は、成り立ちのいびつさゆえに当初から破綻の芽を内包していたといえる。健流の灰川に対する不満は、実親の陽子に対するものと表裏一体である。陽子の犯行動機は健流の死に対する復讐であり、真実を知ったことと関係があるが、より具体的に言うならば「嘘にしておいてくれなかったから」。
陽子は、健流を追い出したことを悔やんでいたに違いない。悔やんで、それでも息子に生きていてほしいと願う感情から、黄色いカーネーションを健流が贈っていると信じていた。健流が生きているという幻想を打ち砕かれた陽子がとった行動こそ、生き残った6人への復讐だった。人は悪に染まったときではなく、希望を失ったときに犯罪に走ることを陽子の姿から学ぶことができる。
13年前の出来事によって伏線は回収された。ミステリーの種明かしは、知ってしまえばなんということもないものだったりするが、現在からさかのぼって謎を張りめぐらせる制作陣の手腕に翻弄されっぱなしだった。ドラマ前半では、主に冴木と蒼佑の兄弟の絆を通して、暴力の連鎖を止めることが描かれたけれども、最終話ではそこからさらに敷衍して、実質的に復讐あるいは憎しみの連鎖を止めることに作品の主題が昇華されていた。