『虎に翼』寅子に寄り添う仲間たちの言葉 よね「決めるのは彼女だ」の“説得力”
シリアスな空気が漂う第113話で、明るい表情で寅子に寄り添ったのは梅子(平岩紙)だ。第23週は「原爆裁判」、百合(余貴美子)の認知症、寅子の更年期による不調と、そう簡単には割り切れない話題ばかり。そんな中、梅子は寅子が更年期を迎えたと知ると、「あらあら〜! トラちゃん、こちら側へようこそ!」と明るく笑った。寅子と梅子が楽しげに更年期特有のほてりに共感し合う場面はコミカルで微笑ましい。
本作では、15分という短い放送時間の間に胸に刺さる台詞が幾度となく登場する。寅子にかけられた言葉ではないが、よね(土居志央梨)の言葉も忘れられない。「原爆裁判」の原告のひとりが法廷に立つことを承諾した。しかし轟(戸塚純貴)は彼女が好奇の目にさらされ、苦しめられることへの不安を抱く。そんな轟の言葉をよねはこう遮った。
「それを決めるのはお前じゃない。どの地獄で、何と戦いたいのか、決めるのは彼女だ」
よねもまた“地獄”を見、“地獄”で戦ってきた人物だ。だからこそ、法廷に立つと決めた原告の意志を尊重し、この言葉を発することができる。短い場面ではあるが、よねの言葉には強い説得力があり、心打たれた。
物語の終わりに描かれた星家の課題、「原爆裁判」の行く末。気になることは多々あるが、寅子の周りにいる人々の存在や心揺さぶる台詞に、今後も注目していきたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、土居志央梨、戸塚純貴、高橋努、趙珉和、平埜生成、井上拓哉、三山凌輝、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、尾碕真花、菊池和澄、和田正人、川島潤哉、入山法子、和田庵、山野海、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK