『虎に翼』余貴美子の鬼気迫る表情の痛ましさ 原爆裁判では葛藤を思わせる“沈黙”も

『虎に翼』余貴美子の鬼気迫る姿の痛ましさ

 8月31日にクランクアップを迎えたことが発表されたNHK連続テレビ小説『虎に翼』。2024年4月に始まったドラマもいよいよ原爆裁判が始まり、クライマックスへと向かっている。最終回まで残すところ約1カ月。寅子(伊藤沙莉)が向き合っているのは、自身の不調と「原爆裁判」だ。第112話では原爆裁判の口頭弁論が始まった。

 昭和35年2月。記者の竹中(高橋努)も傍聴席で裁判を見守る中、ついに始まった原爆裁判。原爆裁判の争点は、「原爆投下が国際法に違反しているのか」、「敗戦後に放棄した損害賠償請求権の保証義務を国が負うべきなのか」の2点に整理された。少し気になったのは、裁判の次回期日を決める際に、淡々と言葉を紡いでいた被告代理人が、裁判長の汐見圭(平埜生成)から「(期日に)異存はありませんか?」と確認を求められると、俯き加減でしばらく沈黙をしながら「はい」と答えていたことだ。ここからは推測でしかないが、被告代理人にも原爆裁判について思うところがあり、心の中では葛藤していた描写ではないだろうか。そう考えると、この裁判の見方も大きく変わってくる。

 第1回口頭弁論を終えた寅子は、原告代理人のよね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)、岩居(趙珉和)と挨拶をする。轟は亡くなった雲野(塚地武雅)の意思も引き継いで裁判に挑んでいることを明かし、よねは「意義のある裁判にするぞ」と寅子に耳打ちする。すっかりと老いた様子の記者の竹中(高橋努)は雲野から裁判の記録を記事にして、世に知らしめてほしいと頼まれていたことを寅子に明かした。誰もが心の内にしまいこんで、忘れようとしていた戦争の記憶。竹中は「そろそろあの戦争を振り返ろうや」と寅子に語りかける。目を背けたくなる原爆投下だが、彼らのようにまっすぐに向き合い後世に残していきた人たちのおかげで、私たちは歴史を省みることができる。

 一方で、寅子の不調とともに百合(余貴美子)には物忘れの症状も日に日に悪化していた。優未(毎田暖乃)からご飯を炊くのを忘れていることを指摘された百合は、顔をこわばらせながら「それは優未ちゃんがやるって言ってたじゃない」と答える。温和な彼女からは想像できないキツい物言いに困惑する寅子。しかし、寅子もまた自分の不調の原因が気になっていた。そんな時、航一(岡田将生)が寅子の体調が最近すぐれない原因は更年期障害にあるのではないかと指摘する。

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