『虎に翼』の“結婚の判決”は未来へと続いていく 寅子のモデル・三淵嘉子と異なる夫婦の形

『虎に翼』未来へと続く“結婚の判決”

 この言葉のように、あれ以来、バラバラになっていた仲間たちが、寅子の結婚(内縁)を祝うために甘味処・竹もとに、バラバラの川が合流するように集まってきた。

 涼子(桜井ユキ)、玉(羽瀬川なぎ)、梅子(平岩紙)、よね(土居志央梨)、久保田(小林涼子)、中山(安藤輪子)、轟(戸塚純貴)、香淑は、(手縫いの)偽物の法服を着て、寅子と航一の結婚に判決を下す。

 夫婦別姓になることで不利益、不都合が起こること、自分が失われる感覚を覚える人もいること、同じ苗字だからといって家族として守られるわけではないこと、でも法律で関係を認められないこともある。それでも自分たちの意思で、家族でいることができるという判決文を、仲間が作って読み上げる。正式な法律ではなく、なんの効力もない。法服だって偽物だ。でも、信じられる仲間が作って認めた独自のルールが、寅子には何よりうれしいものとなった。

 この判決文を語るのが、それこそ家制度のために望まない結婚をした涼子、日本で生きるために本名と出自を隠している香淑、結婚して苗字を同じくしても家族の愛情を感じることのなかった梅子、法律で同性婚が認められていない轟なのである。轟が、離婚してひとりの梅子と、恋人を作る気のない(つまり結婚も眼中にない)よねと「家族」だと宣言することに、法律から外れた関係性の可能性を感じさせた。一度は結婚と出産に苦しんだ久保田は鳥取で弁護士を続けていて、家庭をもっても地方に行っても仕事が続けられる可能性を示唆した。

 寅子は、かつて法律を守られるべききれいな水と思っていたが、いまや、守られるべきものはひとりひとりの尊厳であると考えている。かつて、男女が平等と憲法で規定されたように、いまは法律で決まっていることも、それぞれの尊厳を守るために常に検証し変わり続ける必要もあるのだ。

 いまは、偽物の法服による仲間内の判決ではあるが、いつかきっと、寅子たちがよりたくさんの人たちのための法律にしていくのだろうという希望に満ちた式だった。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜~金曜8:00~8:15、(再放送)毎週月曜~金曜12:45~13:00
BSプレミアム:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜8:15~9:30
BS4K:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、田口浩正、遠山俊也、望月歩、堺小春、三山凌輝、竹澤咲子、高橋克実、片岡凜
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか

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