『光る君へ』に『源氏物語』が“舞い降りた” 吉高由里子の真剣な眼差しがとにかく美しい
また第31回では、まひろの前でだけ見せる道長の自然体な言動も印象的だった。2人の妻、倫子(黒木華)と明子(瀧内公美)と過ごす道長の面持ちは、どこか内裏に務めている時に似た緊張感、ぎこちなさ、気負いといったものを感じる。一方で、まひろと過ごしている時はのんびり屋の三男坊だった三郎に戻っている。
土御門殿に帰ってきた道長を倫子が「おかえりなさいませ」と出迎える場面では、倫子も、そっけない返事をした道長も、何事もないような顔つきや口ぶりだが、心と心が通い合っているようには見えない。明子との関係も同様だ。明子は自分の息子たちにも、道長の嫡男・頼通に負けない地位を与えてほしいとねだる。道長は、子どもどうしが競い合うようなことがあってはならないと言い聞かせるが、明子は不満気だ。その日から、道長は土御門殿にも高松殿にも帰らず、内裏に泊まる日が多くなる。
対照的に、まひろといる時の道長はとても正直だ。道長が嘘をついていると察したまひろに「えっ……」と戸惑う姿や、「中宮様と申し上げると、お目がうつろになります」と指摘された後の気まずい表情は、決して倫子や明子の前では見せない素直さがある。賢子(福元愛悠)の頭をなでる肩の力の抜けた笑顔も心に残っている。
柄本の真摯な演技を通じて、道長が誰に対してどのような感情で向き合っているのかがありありと感じられるのが面白い。倫子と明子に愛情を向けていないわけではないのだが、まひろへの想いは格別だ。
だからこそ、次回予告で流れた倫子の台詞にヒヤヒヤさせられる。察しの良い倫子が、道長とまひろの関係に気づくのはそう遅くはないだろう。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK