『虎に翼』岡田将生×高橋克実の抱擁に込められた戦争の傷跡 航一の“罪”とは何なのか

『虎に翼』が描く戦後の傷跡

 寅子(伊藤沙莉)の後押しから、初めて本音をぶつけあった玉(羽瀬川なぎ)と涼子(桜井ユキ)。玉だけでなく、涼子自身もまた玉の将来を奪ったのは自分だと思い悩んでいた。玉は涼子に「あなたなしの人生は考えられない。私の親友になってくれませんか?」と涙ながらに尋ね、それに涼子は「あなたはもう親友ですよ」と玉の手を優しく握る。主従関係からの解放(シスターフッド)と同時に、玉が勉強してきたこれまでを肯定するような英語のやり取りは、そのセリフの気恥ずかしさを感じさせない。『虎に翼』(NHK総合)第85話では、玉が涼子のことを「お嬢様」ではなく「涼子ちゃん」と呼ぶようになっていた。

 喫茶「ライトハウス」で、法律の本を読む涼子と英語の本を読む玉。各々が自分の信じる道を進み、気兼ねない様子からも2人が対等であることが感じられる。そんな2人を微笑ましく見つめているのは、刺繍をする稲(田中真弓)。やがて寅子と優未(竹澤咲子)が新潟を離れる未来を考え、稲自身のためにも涼子たちと引き合わせていた。ライトハウスをよりどころの一つに。独りにしないという思いは、屋敷で孤独を味わった涼子の母・寿子(筒井真理子)の話を受けてのことだろう。

 ライトハウスのカウンター。寅子は航一(岡田将生)から弁護士の杉田太郎(高橋克実)が主催する麻雀大会に一緒に行ってみないかと誘われていた。優未を連れてきてまでも。航一と優未は初対面であるにもかかわらず波長が合うのか、航一は一瞬で優未との溝を埋めてしまう。唖然としながらそんな航一に嫉妬してしまう寅子は負けじと2人の間に割って入り、必死に話題を広げるのだった。

 麻雀会場に入ると杉田兄が優未を見るなり、うずくまって泣き出してしまう。長岡の空襲で孫娘を亡くし、優未に面影を重ねていたのだ。空襲で兄を亡くした高瀬(望月歩)と同じく、杉田もまた大切な人の死を受け入れられていなかった。

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