桜井ユキ、“華族のご令嬢”からの見事な脱皮 『虎に翼』身分を失っても消えない涼子の美点

『虎に翼』桜井ユキ演じる“涼子さま”の変化

 父・侑次郎(中村育二)の失踪をきっかけに、自暴自棄となった母・寿子(筒井真理子)を見捨てられなかった涼子は、弁護士ではなく結婚、すなわち華族として生きる道を選ぶ。そんな涼子によねは怒りをぶつける。かつて涼子は、よねの姿勢に感化され、「私も、あなたのように周りを気にせず声を上げられるようになりたい」と口にしていた。だが、桜川家存続のため婿を取ることに決めた涼子が言った「よねさんみたいに、強くなりたかった」という言葉は切ない。それでも、寿子を抱きしめ、涙しながら「私にはどうしても母を見捨てることができません」とはっきり自分の意思を伝えた涼子は、以前までの内向的な涼子とは違った。寅子たちとともに高等試験合格を目指す意思がなくなったわけではない。けれど、母を見捨てられない気持ちも本当なのだ。桜井の涙で滲んだ、けれどもはっきりとした意思のあるまなざしが忘れられない。

 そして第17週。寅子と涼子は実に14年ぶりの再会となった。喫茶ライトハウスを営む涼子はこれまでの華やかな着物姿からはうってかわって質素な佇まいをしている。戦争が終わり、身分を失い、苦労を重ねてきたこともどことなくうかがえる。だが、上品さも寅子たちを気遣う優しさも変わっていない。加えて、顔つきが明るくなったというか、涼子の素直な感情がパッと表れるようになっていた。たとえば、寅子に向かって「本当にご立派になられて、こちらまで誇らしい気持ちになっておりましたの」と話す涼子は本当に嬉しそうだし、よねたちの近況を聞いて「皆様のご無事と幸せをずっとお祈りしておりましたの」と思わずワッと泣き出す姿に、「華族」ではなくなったからこそ、彼女の思いやりのある気立てがはっきりと見えたと感じた。

 物語としては、いまだはっきりとは語られていない戦中、戦後の涼子たちの生き様や、涼子に何か思うところがあるのか心苦しげな面持ちを見せる玉の様子が気になるところだが、新潟の地で生きる涼子と寅子がどんなことを語り合うのか、今の涼子を桜井はどんな表情で演じるのか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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