30周年は孫と来られるイベントに!? “課長”有野晋哉が見据える『ゲームセンターCX』の未来
ゲームに挑戦する、その姿を視聴者はただ見守る。YouTubeやTwitchで「ゲーム実況」というジャンルが確立された今では当たり前の光景だが、それを早くからエンタメとして成立させた番組がある。よゐこの有野晋哉がレトロゲームに挑戦する人気番組『ゲームセンターCX』だ。
2003年に始まった同番組は、10周年の日本武道館、15周年の幕張メッセに続き、昨年20周年を迎え、さいたまスーパーアリーナで特別イベントを開催。着実にその規模を広げている。
イベントの模様を完全収録した『有野の挑戦 inさいたまスーパーアリーナ 20周年大感謝祭』Blu-ray&DVDの発売を記念して、有野にイベントの裏側と30周年に向けた展望を聞くと、“課長”らしくもファンへの愛情が感じられる回答が返ってきた。(リアルサウンド編集部)
最初は“ボケ”のはずだった、さいたまスーパーアリーナ公演
――1つの番組が20年続くというのはすごいことですよね。その理由はどこにあると思いますか?
有野晋哉(以下、有野):昔のゲームが分かりやすくて面白いからだと思いますよ。それがたくさんありすぎるから、全然終われない。でも、本音は“課長の人柄の良さのみ”です。
――(笑)。スタッフはもちろん、そこに視聴者までも巻き込む不思議な番組だなと思います。
有野:イベントごとに辞めたADが家族でやってくるって、特殊ですよね。普通、辞めた会社なんか行きたくないでしょ(笑)。
――それも有野課長の人柄あってこそ、ですよね。
有野:でしょ!でも、こないだ怒られましたよ。「有野さんが優しすぎるから、この環境になれすぎてADが他の番組に行ったら長続きしない」って(笑)。それは申し訳ないですよね、育てなきゃいけないのに。
――番組のイベントとしては、2006年に一ツ橋ホールで行われた公演が最初だそうですね。
有野:非常に荒削りなイベントでした。『マイティボンジャック』をやって、休憩を挟んで第2部はタニー(整音・谷澤宗明)のコーナーでワイワイ遊ぶ予定やったんです。でも、1部のゲームがすごく盛り上がったから、「このままボンジャックでいきます」って(笑)。得意なお客さんをステージに上げて、ゲーム手伝ってもらうんですけど、みんな出来ない。それでも、客席は「頑張れ〜!」と応援してくれて、最後にクリア出来た時の盛り上がりね。コーナーをカットさせてくれたタニーに感謝です。
――そんなアットホームなイベントから始まって、10周年には武道館、15周年には幕張メッセ、そして20周年の今回はさいたまスーパーアリーナと、どんどん規模が大きくなっています。
有野:僕、スタッフが病気だと思うんですよ(笑)。どんどん箱をデカくしていくって、やっぱりおかしいと思う。武道館のときに「次回はさいたまスーパーアリーナがいいです!」と言ったら、「20周年でさいたま押さえましたよ!」と言われて「いやいや違う、あれボケやから!」って。一番盛り上がる言葉を抽出してるだけなのに、それを叶えようとするから病気ですよね。何らかの血液検査とかやったほうがいいかなと思います(笑)。今回はプロデューサーから事前に「東京ドームは絶対ダメですよ」と言われていたので、「全国ツアーやります!」と。で、終わったら「勝手にやってください」と怒られました。
――実際、30周年はどうなりますかね?
有野:もう、どうなってるかわからないです。62歳だから怖いですよね。でも、ちょっと手前で『60歳感謝祭』とかやらされるかもしれない。「真っ赤な作業着がなかったから、インドから取り寄せました」とか言われそうです。
――言ってしまったので、これは絶対にありますね(笑)。でも、さいたまスーパーアリーナを埋めるというのは本当にすごいことです。
有野:しかも、実際のキャパは1万5000人じゃないんですよ。1万8000人分の座席が用意されてたんです。前日に大きな会場として使っていて、1日では小さくできないみたいで。「言わないで」と言われてたけど、もうこのイベントの取材も最後だろうから言っちゃいます(笑)。
――その中をトロッコに乗って進む姿は、完全にアーティストでした。
有野:普通はリハーサルでカメラワークを教わるけど、一切ないんです。台本もなくて、いつもと同じペラペラの紙が渡されるんですよ。それが毎回怖いです。だから最初に(番組カメラマンの)阿部(浩一)さんを探して、ちょっと安心してからクレーンを見るっていう。でも、上にウワーッと上げてくれるんやと思ったら、全然上がらないんですよ。「ここで規模感を出してくれ!」と思っても、ステージが始まったら一切業務連絡できない。そういうことを毎回毎回やっています。
――自分だったら、前日から緊張して眠れなくなりそうです。
有野:それが、緊張しないんですよね。家に親戚が来てゲームをしてるくらいの感覚なので、好きな子と一緒にゲームをして、「いいとこ見せよう!」という感覚じゃない。だから、歌ってるスタッフのほうが緊張してます。(作家の)岐部先生とか、すごい緊張してましたから。誰も岐部先生の歌は聴きに来てないって言うねんけどね(笑)。
――会場は大きくなっても、ファンとの関係は一ツ橋ホールの頃と変わってないんですね。
有野:変わらないですよね。ステージがもうちょっと近かったら、誰か上げたらいいと思うくらい。みんな声を出すし、「これはこうだ」とか教えてくれるし、「集中して!」とも言われるし、子どもに怒られたりもするし(笑)。あとはお客さんに、“課長コール”を男だけ言わせて、女だけ言わせて、子どもだけ言わせて、最後は「全員で!」というのが楽しかったです。あれはaikoのライブから取ったけど、aikoのお客さんよりテンポが良くなくて。この会場に集まってるのはただのゲーム好きだから、みんなライブのノリに慣れてないんですよ(笑)。それでも毎回、ウェーブとかをやってもらうのが楽しくてしょうがないです。