『光る君へ』吉高由里子の表情が物語る“恋の終わり”と新たな決意 まひろが宣孝と夫婦に

『光る君へ』吉高由里子の表情が物語るもの

 まひろのもとに、道長から婚礼祝いが届けられた。今や従者を従えるようになった百舌彦(本多力)からは文を手渡される。まひろはその文を胸を高鳴らせて読み始めるが、そこにつづられてた文字は道長のものではなかった。「あの人の字ではない」というまひろの声色が悲しみを誘う。

 第21回で、まひろが越前へ旅立つ前日、まひろは道長と会い、道長を想い続けていたことを明かし、「今度こそ、越前の地で生まれ変わりたいと願っておりまする」と告げた。しかしおそらく、道長ではない誰かがつづった祝いの言葉を目にするまで、心のどこかで道長とともに生きる選択肢があるのでは、と淡い期待を抱いていたのかもしれない。近江の石山寺で出会った藤原寧子(財前直見)は「心と体は裏腹でございますから」と言った。越前の地で生まれ変わりたいと告げても、心はずっと道長を想い続けている。淡い期待が打ち砕かれた時、まひろは失望に似た感情を思わせる面持ちで茫然としていた。

 だが、諦めがついたように口をきゅっと結ぶと、その場から去り、文を書く。一筆一筆思いを込めて書いた文を乙丸(矢部太郎)に託した時、まひろは静かに微笑み、黙ってうなづいた。その晩、宣孝が訪ねてきた。「私は不実な女でございますが、それでもよろしゅうございますか」というまひろに、「わしも不実だ。あいこである」と返す宣孝。宣孝らしい言葉に、まひろはどこか安堵したように見える。宣孝に抱き寄せられたまひろは、その身をゆだねた。

 まひろは道長に深い愛だけでなく苦しみや悲しみを感じ、ありのままのまひろを受け入れると言う宣孝には居心地のよさを覚えている。そんなまひろの、まひろだけにしか分からない心の揺れ動きを表現するのに、台詞も音楽もいらなかった。吉高が浮かべる表情だけを映し出し、視聴者に解釈をゆだねるという、奥ゆかしく趣深い演出に心が引き込まれる。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる